「破壊された世界で」オッペンハイマー しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
破壊された世界で
第96回アカデミー賞作品賞受賞作。
IMAXレーザー/GTテクノロジーで鑑賞(字幕)。
原作は未読。
待望の公開。日本ではソフト・リリースにならなくて本当に良かった。メジャー配給会社が悉く尻込みする中、日本公開に漕ぎ着けてくれたビターズ・エンドに感謝しかありません。
世界を変えてしまった科学者・オッペンハイマーの心情をノーラン節全開の複雑時系列でダイナミックに描いていました。
本編中に説明等は全く無いので、予め相関図や背景等を予習しておくと、よりストーリーの理解が深まるかもしれません。
IMAX推奨。CG排除の画作りに度肝を抜かれ、心を抉られました。カラーとモノクロの使い分けも面白い試みでした。
どうやってつくったのかと興味を惹かれるシーンが盛りだくさん。本物だからこそ出せる質感と迫力に圧倒されました。
核を批判する内容ではありませんでした。気になっていた原爆投下についての描写も、アメリカの熱狂にはとても心が痛くなりましたが、オッペンハイマーが幻視した光景も描いていたし、これで充分なのではないかと感じました。あくまでもオッペンハイマーの伝記と云う点に留意しなければなりません。
オッペンハイマーが科学者の業の果てに完成させた原子爆弾によって、人類は良くも悪くも新しいフェーズへと突入することに。科学の発展を否定するわけではありませんし、本作もそんなスタンスでは無い。ただひとつ確かなのは、人間とはなんと愚かな生き物なのだろうか、と云うことです。
原爆の開発を推進した為政者も、オッペンハイマーを私怨からハメたストローズも、なんと愚かなことか。愚かさによって「破壊」された世界に私たちは生きている。戦慄です。
[余談]
大作にしてはエンドロールが短い気がしました。CGを排除した分スタッフの数が少ないからかもしれません。
こんばんは♪共感ありがとうございます😊先程、
『はだしのゲン』を観まして、アニメながらあの惨状、後々まで続く被害者の苦悩を改めて目の当たりにしてしまいますと、
他の各地の大空襲とは別格であり、日本に住む者としては、いかなる理由あろうとも原爆を作り落としたことは、許す許さないというより、同じ人間としてすべきではなかった、と強く感じました。
核というモノが生物特に人間にいかなるダメージをもたらすか、ある程度迄わかっていた筈です。落としてはいけなかった。作ったら、オッペンハイマーたちの手を離れて政治家たちの手に委ねられる、となると作ったことも間違いになります。科学が進みいつかは作られてしまうかと思いますが、作ったのはオッペンハイマー、悔やんでも広島や長崎が拒否しても仕方ないです。戦争の武器として使われたことは日本にとって痛恨の極み。
原爆で亡くなった方を生き返らせてほしいとも思いました。アカデミー賞は、アメリカでの主催ですので賞をたくさんあげたのでしょう。
ゆ~きちさん
こちらこそありがとうございます。
仰る通りかもしれません。
観る際は、拙文にも書いた通り、オッペンハイマーの伝記であることを念頭に置いておかないといけませんね…
共感ありがとうございます。
希望や野望に燃えた時代、仲間たちと共に原爆製造に遮二無二取り組んだ時代、歓声を浴びながらもブレーキを踏み始めた時代〜バッシング、転落へ。大河ドラマぽい展開ですが、淡々と描いたのがポイントでしょうね。