「【”プロメテウスの火。水爆を作れば、ソ連も作る!と原爆の父は言った。”今作は、天才理論物理学者の毀誉褒貶の半生を描いた物語であり、観る側の原爆のリテラシーにより鑑賞後の余韻が変わる作品でもある。】」オッペンハイマー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”プロメテウスの火。水爆を作れば、ソ連も作る!と原爆の父は言った。”今作は、天才理論物理学者の毀誉褒貶の半生を描いた物語であり、観る側の原爆のリテラシーにより鑑賞後の余韻が変わる作品でもある。】
ー 最序盤は、次々に変わるカット。新たに登場する人物把握に”これは、「インセプション」パターンか!(難解と言う意味。)、と危惧するも、慣れれば”アメリカ近代史の知識”、”第二次世界大戦最終盤の広島、長崎の哀しき悲劇の記憶。”を総動員して哀しくも面白く鑑賞した。体感2時間弱であった。-
◆感想及び印象的なシーン
・一介の物理学の生徒だった、オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)が順調に出世し、世相もあり第二次世界大戦中に米軍が進めた「マンハッタン計画」に関与していく様。その際には、彼はレズリー将校(マット・デイモン)の指示の元、”研究者”として働き、軍部の思惑である”トリニティ実験”を成功させるシーン。
ー 被曝と言う概念が殆どなかったため、人々はクリームを塗って光線から肌を守ろうとする姿。ホント、何にも分かっちゃいなかったんだな・・。ー
・オッペンハイマーが人々から賞賛されるシーン。
ー 賞賛する人の顔が、紙のように剥がれ、最後は全て居なくなる。
だが、ここは、オッペンハイマーが原爆の本当の恐ろしさが”理論的にしか”分かっていない事を暗喩しているシーンである。
「広島平和記念資料館」に行った方であれば、爆心地近くの方が、正に一瞬で蒸発する程の原爆の威力を目の当たりにするだろう。壁に染みのように黒ずんでいる人型は忘れられない・・。-
・そして、オッペンハイマー達「マンハッタン計画」に関与したモノが観た広島、長崎の原爆投下後の光景。
ー ノーラン監督は、ここは敢えて光景を映さない。
色々な意見があるだろうが、今作は天才理論物理学者オッペンハイマーの毀誉褒貶の半生を描いた物語であると思ったので、脳内怒りが沸騰するが、グッと我慢する。
(本当は、全世界の原爆の真の恐ろしさを特に若い人に分かって貰いたかったのだが、あれが米英のエンタメ作品として公開出来る限界なんだろうな・・、と思う。)
だが、キリアン・マーフィー初め、その光景を観た人々の表情が全てを物語っている。このシーンから、オッペンハイマーの憂愁の表情は深くなっていくのである。-
・雑誌タイムの表紙を飾ったオッペンハイマーがトルーマン大統領に招かれた際のシーンも印象的だ。
オッペンハイマーがトルーマンに対し、水爆開発に懐疑的な発言をした際に、トルーマンの表情は一変し、”原爆の投下を指示したのは、私だ。お前は開発者に過ぎない。”と吐き捨てる。
ー 政治家と、開発者との立ち位置及び、政治家は冷酷でないと務まらない事が良く分かるが、現況下、第二のトルーマンが現れない事を祈るしかない状況にある事を考え、愕然とする。-
■戦後、”レッド・パージ”の嵐の中でオッペンハイマーが、原子力委員会委員長ストローズ(ロバート・ダウニー・JR:ねちっこく、嫌な野心家を好演。)に、彼が過去愛したジーン(フローレンス・ピュー)及び現在の妻キティ(エミリー・ブラント)が共産党員である事。
更に「マンハッタン計画」のオッペンハイマーの部下だった男がソ連のスパイだった事から、彼自身もスパイの容疑を賭けられ、小部屋での聴聞会が何度も描かれる。
- 可なり恐ろしいシーンである。水爆推進派のストローズの野心もありオッペンハイマーは追いつめられるが、キティの見事な反駁と(観ていてスカッとする。)マンハッタン計画に参加していた、何度もオッペンハイマーに署名をないがしろにされていたヒル(ラミ・マレック)の意見でオッペンハイマーの嫌疑が晴れるシーンは、やれやれである。
だが、彼は危険人物として監視下に置かれることになるのである。
”ストローズって、嫌な奴だなあ。と言うか、”レッド・パージ”の時代自体が怖いよ。ー
<今作は、原爆の真の恐ろしさを理解していなかった、机上の空論の天才理論物理学者が、広島、長崎の惨状を見て、自らの行為に懊悩し、核に対する思想を変えたがために経験した毀誉褒貶の半生を描いた物語であり、観る側の原爆のリテラシーにより鑑賞後の余韻が変わる作品でもある。
最後に、自らが開発した原爆が惹き起こした事実に愕然とし、深い懊悩、憂愁を抱えつつも、自ら水爆開発反対の姿勢を貫いたオッペンハイマーを演じ切ったキリアン・マーフィーを筆頭とし、各アクターの演技がこの作品の品位を上げていると思います。>
初日IMAX名古屋まで観に行った帰りにゴーストバスターズを観に行くという過ちを犯してしまい、両方の印象が薄く(悪く)なってしまいました。
今日改めて二回目観に行ってきました。観るたびに面白さが増してくる作品だと思います。
さすがNOBU さん、あの作品で反原爆、そうか、そういうメッセージを受け止めるべきでしたね。
日本人は原爆に対して特別な思いがあるから、描き方に物足りなかったり、不満だったりしましたが、欧米人なりの反戦メッセージだとしたら、オスカーは当然でした。ノーランが広島を訪問したことあれば、もうちょっと残酷なシーンを盛り込めたような…?
こんにちは!
地域によって作品やってるやってないはしょうがないっす!
私の住まいだと逆にラブリセットはやってない訳ではないんですが車で片道(下道)約2時間コースの場所でして流石にしんどいので諦めてます(笑)
コメントありがとうございます。長崎は残念ながらまだ行ってません。広島は5~6回程行ったでしょうか。木々と水の街で、路面電車と広い道が市民から大事にされていますね。あの路面電車は原爆投下後、本当にかなり早い時期にもう走り始めたと聞きました。原爆資料館とその周囲の静けさには心を打たれます。老若男女全員が広島カープを応援していてお酒の強い人が多くてお酒の美味しいお店がたくさんあって本当にいい所。街も人も好きです
おはようございます!
ゴーストバスターズは一般的には土日が混みそうなのを予想して初日に観ました。
オッペンハイマーは玄人向け感あったので昨日土曜でもかなり空席はありましたね。
今日私はラインゴールドですね!
予告観てから楽しみにしてたので。
NOBUさん今晩は!
コメント有難う御座います‼️
やっぱり凄いです。レビューは毎回ですが、監督の意図や背景だったりの解釈。
私はミーハー、且つ観たまんましかなく(笑)
先日、テレビで指原がどんなに面白くても、観終わった時に感想が、メッチャ面白かったーしかどんなに頑張っても出てこないって。(笑)
全く一緒だなーって思いました。
コメントありがとうございます。
爆風に身を晒してたりサングラスもかけてなかったり、今なら乱暴にも程が有ると思いますよね。
オスカーも獲ったしダウニーJRはやらかすし、今作が注目されてノーラン監督の思った以上に反響を呼べば更に成功だと思います。
共感ありがとうございます。
主演のキリアンマーフィーやアインシュタイン役トムコンティ等科学者役はそれぞれ熱量の違いが有って、名演でしたね。
ノーラン監督自身は、非常に慎重に題材を扱っていた印象でした。