「【余命僅かと宣告された専業主婦と不愛想で愛情表現が苦手な夫が、二人で主婦の初恋の人を探すミュージカルシーンを絡めたロードムービー。後半、夫が実は妻を深く愛していた事が明らかになる展開は沁みます。】」人生は、美しい NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【余命僅かと宣告された専業主婦と不愛想で愛情表現が苦手な夫が、二人で主婦の初恋の人を探すミュージカルシーンを絡めたロードムービー。後半、夫が実は妻を深く愛していた事が明らかになる展開は沁みます。】
■肺がんで、余命僅かと分かった主婦セヨン(ヨム・ジョア)は、最後の誕生日プレゼントとして高校時代の初恋相手ジョンウ(オン・ソンウ)と再び会うために夫ジンボン(リュ・スヨン)に協力を求め、二人で車で出掛ける。
◆感想<Caution! 作品内容に思いっきり触れています。>
・序盤はジンボンが、妻セヨンが余命僅かと医者から言われた後も、素っ気ない態度でセヨンに接する姿に、少し苛つく。
ー だが、この序盤の数々のシーンが後半に効いてくるのである。
例えば、医者から妻の状態を告げられたジンボンが家に帰ってセヨンから見るとサッサと寝てしまう冷たい夫として描かれたジンボンが背を向けているシーンが、後半ではジンボンの涙を流す顔を映し出しているアングルで捉えたシーンになっているのである。ー
・セヨンの高校時代を映し出すシーンでは、彼女が上級生だったジョンウに恋をする過程が描かれているが、その後のマサカの展開を予想させるセヨンが親友だった女子生徒に絶交を告げるシーン。
ー 伏線がちゃんと張ってあるのである。
そして、これも後半に描かれるのだが、ジョンウは亡くなっており、更にジョンウが告白していたのは、セヨンの親友だった女子生徒のだったことが分かるシーン。-
・ジンボンがセヨンと共にジョンウと車で韓国中を旅するシーン。
ー ジンボンはぶつくさ言いながら、役所の上司に休暇を願い旅を続けるのである。
そしてこれも後半明らかになるのだが、ジンボンはセヨンが”生きているうちにやりたいこと”のメモをゴミ箱から拾っており、それを写し取って妻の想いを一つ一つ叶えていたのである。可なり沁みる。それにしても、ジンボンの愛情表現、下手すぎるだろう!と思ったら・・。-
■何と!ジンボンはセヨンのために旅行中に分かったセヨンの昔の友人達や、子供を産むときにお世話になったオバサンや子供達を読んで、セヨンのためにパーティーを開いて上げるのである。役所で仕事をする振りをしながら、妻の事を思ってイロイロと調べていたジンボンの姿を映し出すシーン。
<今作は、妻セヨンを失う哀しみや彼女への感謝の念を出せなかったジンボンが、セヨンと旅をする中で妻への感謝の念をキチンと表明しなければいけない、そして妻の美しい姿を妻の大切な人達に見せたいと思ったが故の”ラストパーティー”シーンが実に沁みた作品である。
人生は自分の思い通りにいかない事は沢山あると思う。
けれども、イロイロと在りつつも、キチンと日々を過ごす事でその人の人生は美しいのだろうな、と思った作品である。
ジンボンとセヨンは何だかんだ言いながら、30年も結婚生活を続け、二人の子を授かり育てている。
それだけで、充分に二人の人生は美しいと私は思ったのである。>
<2023年12月16日 刈谷日劇にて鑑賞>