劇場公開日 2023年9月8日

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「着目点と脚色が斬新 重厚ささえ感じる映像美」ドラキュラ デメテル号最期の航海 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5着目点と脚色が斬新 重厚ささえ感じる映像美

2023年9月28日
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鑑賞方法:映画館

ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」(原題は「DRACULA」)は、全編が日記や書簡などの記録を連ねた構成で書かれている。
ミナ・マリー(後のミナ・ハーカー)の日記に挟み込まれていた新聞の切り抜きが本作の原作に当たる。「デメテル号の航海日誌」は、その切り抜きの記事の中に掲載されていたものだ。これは小説のごく序盤に位置していて、ドラキュラ白爵が若者の生き血を求めてトランシルヴァニアの山中の孤城からロンドンに渡ったことを示唆するエピソード。
このごく短い章に着目して映画化したことに興味津々で劇場に行った。

ほぼ、航海中の船上という密室を舞台に、乗組員たちが得体の知れない何者かに追い詰められていく。
凝ったセットと衣装・メイクはゴシックロマンの雰囲気が充分。
狭く暗い船内の緊迫感を演出した撮影・構図も見事だ。

吸血鬼のデザインは悪魔的で、ベラ・ルゴシやクリストファー・リーのような夜会服にマントの紳士然とした出で立ちではない。が、映画の最後にそれを思わせる男の影が見られる。
原作の描写では貴族的な身なりと態度の紳士ではあるが、痩せ細り、眼は赤く充血し、犬歯が長く伸び、爪も長く尖った不気味な男なので、原作無視とまでは言えない。

難破したデメテル号が生存者ゼロで発見されたところから物語が始まるから、全員死ぬのだと分かってはいても、子供が犠牲になる場面はショッキングだ。

血を吸われた者がドラキュラの下僕となって操られたり、陽の光を浴びた皮膚が燃えたりする、ドラキュラがホラー映画のスターになって以来のセオリーを踏襲しているのに、原作にもある十字架という最大の弱点は採用されていない。
この意味は、もしかすると続編への布石か…。

時は1897年8月。原作が発表された時期に合わせているようだ。
19世紀末は蒸気船が普及していて、原作のデメテル号は「機帆船」と書かれているから、帆船に原動機を併用した船だ。機関長と呼ばれる乗組員がいて、彼は恐怖のあまり船から身を投げる。
この映画のデメテル号に原動機はあったのか、よくわからなかったが、機関士はいただろうか…。

主人公は映画オリジナルの黒人医師クレメンス(コーリー・ホーキンズ)。この時代、資格を得たとはいえ黒人に医師として働くことは難しい。
原作でドラキュラとの交戦を主導するのは医師でもあるヘルシング教授。そして教え子の精神科医セワード院長が助手として活躍する。
とうとうロンドンに上陸したヴァンパイア=ドラキュラ。この映画がヒットすれば続編を作る計画だろうか…
となれば、クレメンスは恩師ヘルシング教授に助けを求め、共に戦う……のかな?

kazz
ホラー好きさんのコメント
2024年4月5日

原作や時代背景にも着目していて、映画の背景がよく分かりました。

ホラー好き
NOBUさんのコメント
2023年9月29日

今晩は。
 今作は作品のゴシック調の雰囲気が良かったのですが、色々と突っ込みたくなる場面が多すぎて。
 興行成績的にはオオコケしたようですが、続編出るのかなあ・・。では。

NOBU
さんのコメント
2023年9月29日

なるほどです。
コメントありがとうございました。

完
SAKURAIさんのコメント
2023年9月29日

おはようございます!

ナイスタイトル!ありがとうございます🙇

私的には何も捻らず出てきたタイトルだったんですけどね(笑)

SAKURAI