劇場公開日 2023年8月4日

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「「心は形を求め、形は心を進める」の意味の逆転」夢みる校長先生 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「心は形を求め、形は心を進める」の意味の逆転

2023年10月22日
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校長室を無くしたという校長先生の背後に映り込んだ「心は形を求め、形は心を進める」という張り紙。映り込んだのは一瞬だったが、長い間教育現場で、子ども達に型を教え込み、徹底させる指導の免罪符のように使われてきたこの言葉が、子どもファーストのために無くなった校長室の中に貼られていると、まるで正反対の意味を伝えてくることに気づき、感動を覚えた。
チャイムがないことも、宿題がないことも、それ自体に意味があるわけではない。チャイムがなくたって、旧態依然とした指導が続けられていたら、「時計を見ながら、自ら気づいて教師の期待通りに行動する」という真逆の力こそ身についても、「自分の“好き”や“楽しい"や“なぜ”を、時を忘れてとことん追求する」という力は身につかない。教師が自分のさせたいことを、子ども自らが行うように巧みに仕向けた結果の子どものそれは、自主性であっても主体性ではない。それでは知らず知らずのうちに、子ども達を戦争に送り込む手助けをしていたという戦前の教育のようになりかねない。
大切なのは、教師が徹底して子ども達を信じ、子ども達が主体的に学べるためにはどうするのか考えて、より学べるようにしていくこと。同時に、子ども達が見せる追求の姿の中に、学びを見いだし、価値づけられる力量を教師自身がつけていくこと。そのためには、教師自らが問いを持って学び続けること。
映画に登場した先生方に共通していたのは、その点だったと思う。
どうしても自分の過去の体験がベースになり、そこから中々抜け出せないのが人間の性。価値観を変えるきっかけとして、校長のみならず、学校に関わる全ての人に勧めたい。

sow_miya