「巨匠 手塚治虫さんのライフワーク「火の鳥」の第6篇「望郷編」の初映像化」火の鳥 エデンの花 Jettさんの映画レビュー(感想・評価)
巨匠 手塚治虫さんのライフワーク「火の鳥」の第6篇「望郷編」の初映像化
昔々の少年時代に原作を読んだ時はその描写と衝撃の展開に啞然としながら読み進め、後半からラストにもたらす絶望感がなんとも もの悲しく寂しげで、若いセンシティブな心にとてつもないインパクトを受けた事を今でも覚えています
その私にとっての”大問題作”が約半世紀の時を経て、スタジオ4℃のアニメーション技術と共に初めて映像化されるということで楽しみにしていました
結果、映像は素晴らしく、良い作品に仕上がっているとは思いますが、今一歩もの足りなさを感じました
原作の複雑さを回避するために、見易くシンプルに再構築している脚色は見事だとは思いますが、シンプルにしたが故にあっさりしすぎな印象が否めません
原作に忠実に映像化する必要はありませんが、
95分の短尺にするぐらいならもう少し足して主人公ロミが惑星エデン17に世代を超えて種を根付かせていく事や、シリーズ通してのアイコン”火の鳥”をもっとストーリーに関わらせることで、テーマとなる”時間””生命と死生観””輪廻転生”といった所が浮き彫りになり、より見応えのある深みを持たせられたのではないかと思いました
原作ではロミは地球で若返りの代償で死んでしまいますが、本作では荒廃したエデン17に帰り着きます
それが果たしてハッピーエンドなのかどうか?という興味深いエンディングは好きです
ロミのヴォイスキャストを演じた宮沢りえさんの声が優しくて、時にもの悲しく、何とも印象的でした
欲を言えばかなり原作に寄せたキャラクタービジュアルですが、せっかく宮沢さんが演じているのでもっと綺麗に描けばいいのに、と思っちゃいました
コムのキャラクターも常に一生懸命なところがとてもけなげで、必死でロミを地球に送り届けようとするひたむきさとラストが切なかったです
そして、この壮大な愛と冒険の一大叙事詩を締めくくるラスト
イギリスのソプラノユニット”リベラ”の皆さんが奏でるエンディングテーマ曲『永遠の絆』が体の芯まで染み渡り、メチャクチャ良かったです