「名作「鉄コン筋クリート」のSTUDIO4℃だからこそ実現できた、「火の鳥」の魅力を最大限に引き出せた作品。」火の鳥 エデンの花 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
名作「鉄コン筋クリート」のSTUDIO4℃だからこそ実現できた、「火の鳥」の魅力を最大限に引き出せた作品。
「火の鳥」は手塚治虫の代表作の1つですが、正直なところ良さがさっぱり分からずに、「名作」ではなく「迷作」なのでは、とずっと思っていたので、本作への期待感はそんなになかったです。
しかも、手塚治虫のキャラクターは昔のキャラクターなのでキャッチーではなく、作品の世界観に入りにくいんだろうなと想定もしていました。
ところが、どんどん面白くなっていき、エンドロールが流れる時には「いや~良い作品だった!」と感じている自分がいました。
「火の鳥」は、「迷作」ではなく、間違いなく「名作」でした。
では、どうして1954年から連載が始まり、(手塚治虫が亡くなる前年の)1988年まで続いていた「昔のマンガ」の良さが今さら分かるようになったのか。
これは、何といってもSTUDIO4℃が作り上げた作品だから、というしかないでしょう。
STUDIO4℃といえば、松本大洋の代表作の1つである「鉄コン筋クリート」を見事にアニメーション映画化したスタジオですが、まさに本作とメインスタッフが同じなのです。
「鉄コン筋クリート」と「火の鳥」の共通点は、キャラクターデザインでは、癖の強い原作通りのキャラクターをそのまま採用している点です。
そのため、原作の世界観を一切壊さないのです。
ただ、それでもキャラクターに「魂」を入れるべくクオリティーの高いアニメーション表現によって他とは圧倒的に違うレベルの作品に昇華させているのです!
例えば、手塚治虫作品では「典型的なキャラクター」の少年「コム」が出てきます。
これまでの映像表現では、魅力を感じなかったのですが、本作で初めて親近感を抱くことができました。
他にも「チヒロ」なども魅力的なキャラクターでした。
宮沢りえが主人公「ロミ」の声優を務めていましたが、これもとても良かったです。
これまでの映像表現では良さが分からなかった人も、本作で印象がガラッと変わるような、最新鋭のこだわりを貫いた名作アニメーション映画です。