「下げすぎてる?」ナポレオン SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
下げすぎてる?
ひと昔前ならナポレオンといえば英雄の代名詞みたいな評価だったのに、ずいぶんこの映画は負の側面に着目したなあ、という感じ。
人間としての偉大なところはひとかけらもなく、戦争がうまいだけの、尊大な野心にみちた、実は小人物、みたいな描かれ方をしているように見える。
一方、ジョゼフィーヌはもう一人の主人公かというほどスポットが当てられてて、実は彼女あってのナポレオンだったんです、みたいな感じになってる。
こういうナポレオン像も面白いっちゃ面白いんだろうけど、それはあくまでナポレオンが偉大で英雄だ、という世間的な定評があるからこそ面白いんじゃないか。世界史に疎くてナポレオンのことよく知らない自分からしたら、影の部分だけじゃなくて光の部分も知りたいと思ってしまう。
この映画のナポレオンは意図的に「下げ」すぎてるようで、実際とは違うんじゃないかなー、って疑ってしまう。自分のことカエサルとかアレキサンダーだとか思ってたかもしれないけど、そういう「自分を英雄として演出する」ことは、幼稚な傲慢さからだけではなく、冷徹な戦略からでもあったんではないか、と思う。
ピラミッドに大砲を打ち込んだシーンは「ん?」と思った。スフィンクスの鼻が欠けてるのはナポレオンがやったんだ、という有名なガセネタがある。ガセではあるけど、いかにもナポレオンにふさわしいエピソードなので広まったんだろう。たぶんこのシーンはそれを再現してるのかも…。でも、僕が知らないだけでほんとうにピラミッドに大砲を打ち込んだことがあったのかな。
ストーリーはともかく、フランス革命あたりの上流階級や庶民の生活の様子が細部にわたって生き生きと描かれてるのは面白かった。絵画でよく見る世界の実際を見てる感じで。