劇場公開日 2023年12月1日

「筆まめで泣き虫なナポレオン」ナポレオン うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0筆まめで泣き虫なナポレオン

2023年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ナポレオンの伝記映画と思いきや本編は、ナポレオンの手腕や近代史における功績よりも妻・ジョセフィーヌとの愛と連帯の悲喜交々を軸にしている。史実のアレコレは他の作品や媒体に譲り、「ナポレオン・ボナパルト」の人間、とりわけ男としての一面を掘り下げる姿勢のようだ。

近年海外ドラマで流行している、歴史ものにメロドラマを掛け合わせたテイストに近く、予告やポスターの雰囲気とはだいぶ印象が異なる。
仕事はキツイし単身赴任続き。妻は自分の留守に浮気するし、単身赴任先からいくら手紙を書いても返事をくれない塩対応。おまけに、スキャンダルを新聞にとりあげられても毅然としていなければならない。将軍はつらいよ、である。

とはいえただのコスプレメロドラマではなく、ナポレオンの戦史のうち選りすぐった戦場を再現した戦闘シーンは大変見応えがある。銃弾と砲弾が飛び交う戦場を進む歩兵の足取りや、銃の筒先のブレなど、人と人とがぶつかり合う戦場の生々しさが伝わってきた。
衣装や美術にもかなり力が入っており、衣装の生地や武器の装飾に精緻な細工が施されていた。ただし、昼は窓からの外光、夜はろうそくの明かりのみの照明環境までをも再現しているため、十分に味わえないのが勿体ない。

歴史研究によるとフランス皇后を退いてからのジョセフィーヌはナポレオンにとって良き相談相手だったようで、夫婦ではない距離感の方が上手くいく、親友やきょうだい、もしくは母と息子のような多面な絆があったのだろう。本編はナポレオンの視点で二人の関係が語られるが、ジョセフィーヌの視点も気になる作品だった。

リドリー・スコット監督のお約束である「ディレクターズカット版」が今回も制作されるのかはわからないが、追加要素に期待したい。

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うぐいす