「いい意味でナポレオン夫婦の話」ナポレオン ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
いい意味でナポレオン夫婦の話
北野武「首」と同じく、予告編観ても実はあんまり期待してなかったのだけど、そうか「グラディエーター」コンビだったか。お客さん意外に多かったな。
そして先週観た「首」に重なる部分は多い。どちらも観客の知っている史実と戰があって、それを出していかねばならない。必然的に戰はダイジェストになるが、こちらはラストの数字と2〜3の単語のテロップにすべてが集約されて、ああ、なるほど、まさにそれ、という即物的展開で偉人でも奇人でもない「こんな男がいた」を次から次へ写す。
中でも妻ジョセフィーヌとの出会いと、結婚、離婚、離れがたい関係性になることと、そしていなくなってから、というところで大きく主人公の変化がでる。というかそこだけ面白い。ある意味、戦場で指揮する武将的な面白くもない側面(ある意味「首」におけるタケシの秀吉だな)をホアキンがやって、その内面をジョセフィーヌが背負った映画、という感じで、いちばん良かったのはもちろんヴァネッサ・カービーであるのが「ハウスオブグッチ」「最後の決闘裁判」のリドリースコット的。
もちろん、ナポレオンの戦いなので、ヨーロッパ周辺国、民族的色合い、舞台装置としてのエジプトのピラミッドにスフィンクス、無人の燃えるモスクワ、凍結湖での戰い、そしてワーテルローまで見せ場は凄まじく魅力的なのだけど、ダイジェストの絵巻物みたくてもったいない。なぜならナポレオンと兵士たちの話ではないので情報は入ってけるけど熱くはならない。
しかし、この間のスコセッシの「キラーズオブフラワームーン」と共にアップルスタジオ、凄いな。やっぱり映画会社ではこんなもの作れない。とにかくエンドロールが長い。いつまであるんだってくらい長い。本編はそんなことないけど。