「語られることのない戦後を描いた渾身の一作」ほかげ こべっこさんの映画レビュー(感想・評価)
語られることのない戦後を描いた渾身の一作
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NHKの連続テレビ小説(連ドラ)でくりかえし語られるテーマに先の大戦を生き抜いた
人たちの復興に向かう姿というものがある。
2023年後期『ブギウギ』も2024年度前期『虎に翼』もこの時代だ。
この映画では連ドラでは取り上げられることのないであろう、売春婦であったり、
傷痍軍人であったり、戦争によって精神を病んでしまった人や、戦犯や、戦争孤児が
登場する。
連ドラが大変な中前向きにがんばる人々を明るい調子で描くのに対し
この映画では登場人物たちが戦争があったがゆえに命を奪われたり、
人生を狂わされたりする様子が描かれていると同時に、
戦争孤児となった少年のみが犯罪に手を染める事なく
一人で生きていこうとする姿が描かれ唯一の希望となっている。
21世紀になっても、令和になっても
戦争はなくなってはいない。
先の大戦で不戦を誓った日本でさえも
アメリカの世界戦略ににどっぷり組み込まれ
アメリカ製の武器をたっぷりと買わされ
多国籍軍による軍事演習を頻繁に行い
周辺国を刺激することで緊張を高めることになっている。
戦争そのものではなく
戦争によってひきおこされる悲惨さを
今まで光を当てられて来なかった人たちを通して描くことで
時代への警鐘を鳴らす塚本晋也監督渾身の一作となっている。
役者さんたちそれぞれいい仕事をされていますね。
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