劇場公開日 2023年11月25日

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「居酒屋を舞台にした壮大な反戦ドラマ」ほかげ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0居酒屋を舞台にした壮大な反戦ドラマ

2023年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

終戦後、瓦礫と化した町の片隅で居酒屋を営み、奥の座敷では体を売って生計を立てているヒロインの視点で、物語は進んでいく。店には腹を空かせた少年や、心に深い傷を負った復員兵や、闇市で強かに生きるテキ屋の男たちがやってくるが、外の状況はあまりよく分からない。

塚本晋也監督の演出は、小さな窓(居酒屋)から大きな世界(瓦礫の町の状況と人々の生活)を覗き見するようなミニマムな手法に徹している。その効果は、膨大な予算を注ぎ込んだどんな戦争ドラマよりも強力だ。居酒屋を舞台にした壮大な反戦ドラマ、というのが率直な感想だ。

もう1点、別の復員兵に関するシーンでは一瞬鳥肌が立つほど怖い思いをさせられる。戦争の残虐を人物の顔と格子窓の光で表現したキラーショットは、今思い出しても体が震える。なぜなら、そこにも監督の強い思いが込められているから。大枠から細部まで、メッセージ性がパワフルな作品だ。

清藤秀人