劇場公開日 2023年10月6日

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「これでは猪木さんをさがせない」アントニオ猪木をさがして snake666さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0これでは猪木さんをさがせない

2023年10月8日
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鑑賞方法:映画館

かなりレベルの低いドキュメンタリー映画だ。
製作時に棚橋弘至が監督に「猪木さんを知らない世代にも伝わるような作品にして欲しい」とリクエストしたとの事だが、残念ながらそれは果たされてはいない。いや、知っている世代にも何も響かない内容だった。これって猪木さんを知らない人が作ってるのか?と思わずにはいられない程だ。
猪木初心者を考慮に入れるのであれば、やはり名試合のシーンや数々の名言を語るシーンをもっと盛り込むべきだったのではなかろうか。それこそが猪木さんの凄さを知ってもらえる一番分かりやすい方法ではないだろうか。
例えば「道」の朗読シーンは入れるべきだったし、お馴染みの「1.2.3.ダー!」「元気があれば何でも出来る!」すらも無いのは疑問しかない。
これは何十回と聞いてきたオールドファンでさえ改めて聞きたかった見たかったのではないだろうか。
試合シーンのみならず試合以外のシーンも含め莫大な量の映像アーカイブは存在しているわけで、このコンテンツの弱さにはガッカリだった。
インタビューを受ける人も神田伯山よりも、長州力、坂口征二、佐山聡、小川直也、古舘伊知郎等、猪木さんの近しい方々のコメントが聞きたかった。こうしたあたりも違和感しかない。
なぜ入れたのかわからないドラマシーンは、こっちはこっちでクオリティの低さが目立ってしまってかなりのノイズになっていたのも残念だ。
安田顕の演技はうまいとか、各時代の街並みの再現具合は良かったりもしたのだが、例えば80年代編のチャンネル争いにて「ワールドプロレスリング」vs「金八先生」(もしくは「太陽にほえろ」)のはずが、結果的にドラマではなくバラエティ番組を見ている事になってしまっていたり、続く90年代編は見るにたえない青春もので、名言「馬鹿になれ」が「雑」に扱われてしまうしまつ。さらに2000年代編のどう見てもAVには見えないVHSを「お宝AVだぁ〜」と喜ぶ後藤にも本当に酷すぎるなと。
とにかく挙げたらキリがない程のダメな部分が多い本作だが、個人的に最も弱いなぁと思ったのが、猪木さんの挫折の部分をしっかり伝えていない部分も原因かと思った。そこの伝え方が弱いためにいかに猪木さんが逆境から這い上がったかが今ひとつ響いてこない。ゆえに猪木さんがいかに凄い人だったのかが前に出て来ないのである。
ドキュメンタリーは真実を忠実に語るべきものであると思うが、そうした部分が著しく足りなかったのが本作を駄作たらしめてる要因に他ならない。
本作で唯一伝わってきたのは現在の新日本プロレスのトップレスラーであるオカダカズチカの猪木さんともっと話をしたかったという切ないエピソードのみだった。

今後も猪木さんのドキュメンタリー映画や、はたまた伝記映画が作られるかもだが、今作のようにはならないよう、猪木さんに敬意を表した内容のものが作られていく事を心から願いたい。
その為には焦らずじっくりと丁寧に作品を作って欲しいものだ。今作は一周忌に間に合わせようと焦ってこんなチープな内容になってしまったのではと思わずにはいられない。

snake666