「新たな絆と世界へ、レッツ・フライ!」FLY! フライ! 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新たな絆と世界へ、レッツ・フライ!
よくTVの動物番組なんかで見るカワイイ映像と言えば、カモ親子の移動。
池や道路を、親ガモの後を一生懸命ついて子ガモがひょこひょこひょこひょこ。
実際にそれを見た事ある。町中。何処ぞの池からやって来たのか、道路を横断。
生で見たら確かに可愛らしかったね。
そんなカモは渡り鳥。季節や環境、繁殖に応じて長距離大移動。
飛び立ってはまた戻ってくる。鳥の特性の一つ。
しかし、渡りをしないカモもいる。
あるカモ一家の父親、マック。
ニューイングランドの森の池でずっと暮らし、一度も渡りをした事がない。
ここにいれば安全。ここでの暮らしが幸せ。
妻パムや二羽の子供ダックスとグウェンは池から外の世界に憧れるが、マックは池の外へ出る事を許さない。
子供たちに池の外に出ようとしたカモの末路を聞かせ、池から外は危険がいっぱい。
そんなカモ一家が初めての渡りへ。
過保護な親。特に父親。
自由を求める子供。
映画ではよくある設定。アニメーション映画でも『ファインディング・ニモ』などすぐ思い付く。
この父ガモの考えをどう変えさせるか、それがまず描かれると思ったら…
叔父も池にずっと暮らしていて、充分幸せ。王様気分。
ずっと独り身で変わり者だけど…。
こうなりたい…?
なりたくない!
変わり者叔父のある意味ファインプレーだけど、あっさり考え変える。
まあ本作は小さな池を舞台にそこでずっと暮らすか外へ出るかではなく、池を出て初めての渡りの大冒険が本筋。
さて、いよいよ出発。目指すはジャマイカ。
叔父も末っ子のキュートなお願い顔に負けて一緒に。
一度も渡りをした事がない。子ガモたちは上手く飛べず…なんて事もなく、トントン拍子にテンポ良く。
レッツ・フライ!
池を飛び立って、空へ。
解放感、浮遊感はたっぷり。
さあ、どんな大冒険が…?
早速迷子に。
南へ目指してた筈なんだけど…。
雨避けしていた池で会ったのは…
サギ。
怪しい言動。マックが話してた通り、襲われて食べられちゃう…?
遂に本性を現した! 子ガモを食べようとした巨大ナマズから助けてくれた。
実は親切だったサギ。
こちらもこちらで変わり者だけど、だからと言って見た目やイメージで偏見持っちゃダメ。
次飛び立った先は、見た事もない地。
至るところに巨大な物体、そこに暮らす“動物”がうじゃうじゃ。
人間の世界。大都会。
鳥や他の動物から見れば人間世界ほど摩訶不思議なものはない。
夜なのに昼間のように明るく美しく輝くものもあれば、ゴミや危険もいっぱい。
叔父が公園に迷い込む。そこで会ったのは…
ハト。
食べ物を漁るハトをマックはゴミドリなんて呼び、ハトたちのリーダーのチャンプがブチギレ。
そこをパムが機転を利かし、チャンプから信頼を得る。
さらにジャマイカ出身のオウム、デルロイを紹介されるが…、今はレストランの鳥かごに囚われの身。
ここNYマンハッタンの名レストランのシェフ。部下の料理人たちもビビる恐ろしい人間で、鳥料理は得意料理の一つ。
デルロイを救出出来るか…?
厨房に忍び込み、鍵を手に入れるも、マックが誤って鍵を飲み込んでしまい、シェフにも気付かれ…。
ファミリー向けアニメーション定番のドタバタだが、ハラハラドキドキの大ピンチ…!
このシェフ、このシーンだけかと思いきや…、
チャンプと別れ、デルロイも加わり、ジャマイカへまっしぐら!
グウェンが初空中おしっこを恥ずかしがり、林の中で。
そこで奇妙な扉を見つける。
そんな扉にわざわざ入らずさっさと旅を続けたらいいじゃん!…と正直思ったが、何かあったら何か起こらないと映画としては盛り上がらない。
マックもあの人間世界でのピンチを乗り越えて自信気。
そこにいたのは奇妙なアヒルの集団。
彼らに連れられて行くと、人間たちがアヒルの為に作った楽園。リゾートのようなアミューズメントパークのような。
先を急ぎたいのもやまやまだけど、たまには息抜きしなきゃ。
ここで一息満喫。
そこへ一台のトラックが。アヒルたちが管理してる人間に連れられて。
トラックに乗っていたのは、ここで再び会ったが百年目。あのシェフ!
ここはシェフ御用達のアヒル牧場。
ダックスがいち早く気付き皆に危険を知らせるも、逆に捕まり、翼がぼろぼろに…。
マックが助け、何とか逃げ出す。
街中のモーテルでひとまず休む。
皆に危険を知らせようとしたが逆にピンチに陥ったダックスを、マックが責める。
もう何もするな!
それは心配するが為に言ってしまった事だが…、親は子供の事を分かってくれない。
旅のピンチで家族のピンチ。
そこにヘリ襲来。乗っていたのは言うまでもない。チョーしつこいシェフ!
たまたまダックスとグウェンは難を逃れ、マックやパムら皆捕まってしまう。
助けに行きたいが、ダックスは翼が…。
その時…!
ヘリの中。マックとパムだけ別の鳥かごの中に。
絶体絶命。勇ましかったパムが初めて弱気に。マックが勇気付ける。君が力をくれた。
旅の中で各々勇敢になっていた。
皆で必死に抵抗。シェフをKO。
スイッチの上に倒れ、床が開き、マックとパムが入ったかごが落下。
今度こそ絶体絶命! そこへ助けに現れたのは、ダックスとグウェン。
ダックスはぼろぼろになった翼を布で補修。
子供たちも旅の中で勇敢になっていた。
ところであのシェフ、あの後どうなったんだろう…?
鳥から反撃を受けた人間。これもある意味、『鳥』…?
ピンチやユーモアやキャラや展開も含め、予定調和。
目新しさはなく、イルミネーション作品でもピカイチって訳じゃないが、無難に楽しめる。
家族の絆、仲間との出会い、危険に見舞われても知る初めての世界。
吹替で鑑賞。地元の映画館では吹替しか上映しない。
見る前にSNS上で堺雅人の吹替が酷いなんて目にしてしまったが、そんなに悪くはなかったけどなぁ…。麻生久美子共々好演。
羽佐間道夫や野沢雅子らはさすがプロ。羽佐間道夫が担当した変わり者の叔父はオリジナルではダニー・デヴィートで、こちらでも聞いてみたかった。
グウェンがキュート。吹替担当は舞台『SPY×FAMILY』のアーニャらしい。
ミニオンと出会ってうるうるお願い顔されたら困っちゃうね。
楽園のようなジャマイカで過ごし、再び渡りを。あの池へ。
迷子になった“鳥”がいる。彼らを送り届けよう。
ぺ、ペンギン…? 南極…?
本当にレッツ・フライ…?
幾多のピンチやトラブルを経てきたんだから。
さらに育まれた家族の絆と勇気で、どんな冒険もへっちゃら!
さあ、レッツ・フライ!