「月へ行こう」FLY! フライ! ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
月へ行こう
イルミネーション最新作と聞いたらそりゃ観に行かねばと思い立って鑑賞。
やはり楽しかったです。小さな池で暮らすカモの親子が渡り鳥になって飛び立つというシンプルなストーリーですが、イルミネーションが培ってきた実力がこれでもかと発揮されたストーリーと作画を堪能できました。
渡り鳥として飛び立ってから色々トラブルに遭いつつも、その度に前向きさを持って進んでいく家族と周りの鳥たちの姿がとても良く、ある種のサクセスストーリーとしても機能していました。
サギに捕まりそうになったと思ったら実はしっかり助けてくれる人だったり(ブラックジョークの連発にマックたちはヒヤヒヤしていましたが)、NYで野良鳥たちに絡まれた時に警戒していたと思ったら、彼らにも生活があったりと、自分たちの知らない世界を知っていく過程は観ていて新鮮な気持ちになれたのも良かったです。
今作のヴィラン的ポジションは鳥から見た悪役というのが強く、養鶏場の人だったりシェフだったり、彼らからしたら仕事なので普通だけれど、マックたちからしたらそりゃあ驚きの連続だろうなと思いました。
シェフはヘリを出動させるくらい鳥たちを捕まえたい貪欲さがギャグになっていました。
ラストの浜辺でのダンスシーンの高揚感は本当に楽しく、作画の良さも相まって踊り出したくなりました。楽曲もアグレッシブさ全開でウキウキしちゃいました。
オチも新たな場所を目指して飛べない鳥の代表格のペンギンと向かうというのも、マックが勢いよく行こうぜ!と張り切っているのでこちらもついて行きたくなる感じで良かったです。
キャラクターがたくさん出てきながらも、誰も彼も足を引っ張らずそれぞれ見せ場があるのも最高でした。
マックは超心配症の父親で、池から飛び立つ事に危険性を持っていながらも、弱い自分の殻を破るために旅に出ると決めてからの行動は素早く、そこからの漢気っぷりがずっと素敵でした。
子供たちをのびのび育てつつも、子供たちの勇気や行動力を尊重して、危険な時には自分が前に出て全部背負う、序盤では臆病さが目立っていたのに、事を進めるごとに強くなっていく姿が印象的でした。
奥さんのパムはとにかく強くて勇敢、それに愛嬌もあってマックがやらかしそうになったらサポートに入ったり、饒舌なトークをかましたり、誰よりも好奇心旺盛だったりと展開を強く動かしてくれて頼もしかったです。
チャンプとダックスのおてんば兄妹も観ていてコロッコロ変わる表情が楽しかったです。
チャンプも少し臆病だけど、誰かを助けるために前向きに行動する姿が良かったです。羽を広げて良心を助けに向かうシーンはウルっときちゃいました。
ダックスは甘えん坊の面白い子で、小便のくだりが小刻みに笑わせてくれて好きでした。
他にも役に立ちそうで立たずに終わったおじさんだったり、ワルそうに見えてめっちゃ優しいグウェンだったり、檻から抜け出してめっちゃ元気になったオウムさんだったりと、魅力的なキャラが多くてそれを全て捌き切った脚本もお見事だったなと思いました。
作画がこれまた素晴らしかったです。空中に水中、街中の様子と実写と見間違うレベルの美しさに息を呑みました。
滑空するシーンが多いのでライド感強めなのも良いですし、羽だったり景色だったりのカラフルさが目に栄養を補給してくれました。
テンポよくサクサク進むので、ストーリー性が強い作品かと聞かれると微妙なラインですが、真ん中ど直球に貫いてくれる王道の物語にどっぷり浸れて最高でした。イルミネーションは本当に良いアニメ制作会社だなぁと再認識しました。
鑑賞日 3/16
鑑賞時間 18:10〜19:55(「ミニオンの月世界」と同時上映)
座席 L-7