劇場公開日 2024年9月27日

「救済と再考:人身売買を超えて問いかける子どもの性」サウンド・オブ・フリーダム CineScribeさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0救済と再考:人身売買を超えて問いかける子どもの性

2024年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『サウンド・オブ・フリーダム』は、児童人身売買という許されざる行為に正面から挑む社会派スリラーであり、そのテーマの深さは一見相反するメッセージにあります。すなわち、搾取の悲劇を徹底的に非難しつつも、子どもの性や身体に対する過度なタブー視もまた慎重に再考されるべきだという視点を提示する点です。

ジム・カヴィーゼル演じるティム・バラードは、単なるヒーロー像を超え、救出のミッションに命を懸けながらも、保護だけでは解決しない問題の複雑さを映し出します。彼の行動は、犯罪者に立ち向かう一方で、子どもたちが健全な社会の一員として尊重され、性やアイデンティティについても過度な腫れ物扱いをしない未来を模索しているように感じられます。

さらに本作の公開までの道のりも映画そのものと同じくらいドラマティックです。20世紀フォックスによる配給がディズニーの買収で一時頓挫するという障害を乗り越え、最終的にはAngel Studiosがクラウドファンディングによってその重責を担いました。この経緯は、観客の力がいかにして映画を社会的運動へと昇華させるかを象徴しています。

『サウンド・オブ・フリーダム』は、現実の闇を照らし出すと同時に、タブーへの挑戦も辞さない作品です。児童人身売買という問題を過度な保護主義や恐怖に陥ることなく捉え、社会が子どもの性や身体に対してよりオープンであるべきだという大胆な問いかけを放っています。その結果、本作は観客に一瞬たりとも目を逸らさせない力を持つ、映画表現の一つの到達点と言えるでしょう。

CineScribe