「交差する鍵盤」言えない秘密 えさんの映画レビュー(感想・評価)
交差する鍵盤
確実にターゲット層ではないけれど、そろそろ甘酸っぱい恋愛映画を摂取しないと枯れてしまいそうだったので見た。
当初の率直な感想としては、本当にオーソドックスで、あらゆる場面が既視感に溢れたシンプルな映画だなー。という印象だった。まさに大学生の恋愛を見せられている気分で、キャラクターもかなり記号的なこともあり、特段面白みを感じることができなかった。
自分が学生だったら感じ方も違っただろうとも思った。
冒頭から溢れる微妙で不穏な空気は、彼女がこの世のものではない可能性を容易に想像させてくれるが、案の定そのままだったのもオーソドックスの域を超えないなー。という印象のままだった。
しかしそうなると、あらゆる所に矛盾が出てくるのでは??と勘繰っていた。が、物語のキーであるピアノで時を超えてきて、最初の1人にしか気づかれない。という謎ルールの種明かしからは、綺麗に伏線も回収したし、それまで自分の中にあった「オーソドックス、普通」から逸脱してきて面白くなってきた。
ピアノが過去と未来を行き来できるタイムマシンとは面白い。ピアノの演奏は確かに伴奏者も聴衆も時間の概念が曖昧になってしまうような何かがあり、納得感のある装置として機能している。
ただし、冷静にそれまでのイケメン大学生の三角関係()を見ていたものが、ゆきの(ヒロイン)のヒステリックな母親の登場から毛色が変わり、彼女もすでに亡くなっているというホラー展開から、ピアノで時空を超えてきたというSF展開が乗っかってきて、ピアノ演奏からの教室崩壊で「んんん???」となったのも事実だ。
みんなで乗っていた各駅停車から急にみんな特急に乗換えてしまい「着いてこれないおじさんは置いていきますから。」というような感じで呆気にとられたし、乗り遅れそうになっている自分の感性もなかなか寂しかった。若かったら普通に受け入れられたと思う。
想像していた映画では無かったが、想像を超えていたのでそれなりに楽しめた。
背もたれも無い校舎前のベンチで、座りながら眠り、横からゆきのが寄りかかって寝てしまっても、気づかず動じない主人公の体幹凄い。