「作品が何十年と残り続けること、大きな希望です」言えない秘密 🍸さんの映画レビュー(感想・評価)
作品が何十年と残り続けること、大きな希望です
本作で印象に残っていることの一つが、台詞のない演技である。
この作品はピアノが紡ぐ繊細な音色とともに物語が進んでゆく。古川琴音さんの纏うミステリアスな雰囲気や彼女の涙には引き込まれるものがあり、京本大我さんの瞳には人の心の機微を繊細に宿すものがある。
台詞というものを超えて瞳や声色などから伝わってくる苦悩や葛藤、焦燥に強く揺さぶられ、彼らの“もがき生きる熱量”のようなものが、自身の目には苦しいほど美しく、眩しく映った。
また樋口親子のやり取りや、父の子に対する距離の置き方がリアル。観る人によっては湊人、あるいは父に、ふと自己を重ねた人も多いのではないかと思う。自身もかつて母親がそのような言葉をかけてくれたことを思い出し涙が溢れた。
できるだけ先入観なしに見た方がより楽しめるが、この作品は音楽の知識を以て初めて布石に気づく点もいくつかあったため、
全てを知った上で、何度も観るうちに細かい仕掛けに気付けたり、2人の気持ちに共感できたりするのも、この作品の楽しさの一つであるのかもしれない。
きっと自身には、評価といえるほど上からの視点でものを述べることができない。この作品に心癒える自分がいる。じっくり咀嚼し、血肉となっていく。この作品に出会えて本当に良かったと思う。
この作品が何十年と残り続けること、大きな希望です。
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