「斬新で完成度高い秀逸なサスペンス芸術」ヒンターラント cycycyさんの映画レビュー(感想・評価)
斬新で完成度高い秀逸なサスペンス芸術
全編ブルーバック撮影というのを見た後に知り、あーなるほど!と感服した。そうとは知らず、いたるところで背景が歪んだり絶妙な角度で傾いてたりして、それが各シーンをすごく強く印象付けてストーリーに厚みを与えてるなーと感じながら見ていた。歪んでるのに「正しくない」という感じではなく、計算され尽くした整然さがそこにはあり、歪んでるのに美しい。(特に、主人公が列車の中で窓にもたれ掛かっているシーンの傾き方の角度・画角の秀逸さよ!)そして歪んでるのに不思議と「不自然」とは感じない。むしろお話の中に溶け込んでて、ブルーバック撮影とか、人工的とか、そういうことを、見てる最中は全く考えなかった。監督がインタビューで「VFX技術がスーパーヒーロのためにだけ存在しているのではなく、本気で向き合えば全く新しい美的コンセプトそのものになる」と発言してて、まさにその通りの作品だった。
歪みの話ばかり書いたが、純粋にサスペンスとしても最後まで飽きさせないストーリー展開で、登場人物たちの複雑な心情や性格を見事に描いていた。役者さん達も全員素晴らしかった。久々に見た完璧な映画。60代と若くはない監督さんがこういう新しいことに挑戦されていることに心から敬意を表し、応援したい。
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