劇場公開日 2023年9月16日

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「巨大な無関心」国葬の日 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0巨大な無関心

2023年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

安倍晋三元首相の国葬の日の一日の様子を淡々と写すという、ユニークな企画のドキュメンタリー映画。全国各地の都市で国葬についてどう思うか、その日をどう過ごすのかを映し出すことで、日本の平均的な空気が見えてくる作品だ。
正直、事件やドラマチックなものは写っていない。それぞれの人々が普通の一日を過ごしている様子をカメラが写しているだけと言ってもいい。中にはその日が国葬の日だと知らない人もいる。もちろん、知っている人もいて、大きな関心を寄せる若者もいる。国葬は世論を二分する話題だとメディアでは取り上げられたが、実際の市井の人々は、そもそも大きな関心を持っていないことが浮き彫りになっている。
この映画を退屈と感じる人はいるだろう。だが、巨大な無関心をカメラに収めた点は特筆に値する。カメラはたいてい、事件などの派手なものを写しがちであるので、無関心を写すことはわりと難しいものだ。日本社会を覆う無関心の正体にわずかでも迫っている点でこの作品は見事なものであり、企画の勝利だ。

杉本穂高