「人間の絆」月 しんなりママさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の絆
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すべての人間に共通する思いとして健康で幸せに暮らしたい、周りの人からあなたがいて良かったと望まれる人生を送りたいという願望がある。裏を返せば心身が健康でなく周りの人に世話をかけたり、もっと言えば疎まれるような人生は不幸だし、欲しくない。フランス革命から長い時間を経て2008年5月、ようやく障害者にも順番が来た。国連の権利条約を機に当事者が発信する機会が増えた結果、障害による社会的不利は健常者が解消することがルールとなるはず、だった。でも口に出さないけれどそれはあくまでも条約とか世界基準の大きな話であり、自分のこととなるとそれは受け入れられない苦痛となる。
さとくんの言動に胸騒ぎを覚え、非番にもかかわらず職場に出向き忠告する洋子。これに対するさとくんと洋子の声が混ざった本音の問いのシーンが強く印象に残っている。公に口にできない、しかし人間に共通する帯のような負の感情といった意味でS.モームの小説「人間の絆」のテーマにつながる。
しかし希望はある。今まで見たくないものとして隠されていたことがこの映画が公開され、生物の宿命として人間には生まれながらに持つ心身の条件があること、平等でないことが明らかにされた。この事実が白日にさらされ、目の前に突きつけられたことで人間は変化への一歩を踏み出すことができたと感じる。
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