「モチーフとしての大量殺人犯、舞台装置としての恋人」月 びおさんの映画レビュー(感想・評価)
モチーフとしての大量殺人犯、舞台装置としての恋人
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原作未読です。
前半のさとくんの紙芝居のくだりや、施設長へ意見するなどの真面目な青年像と、大麻や刺青、金髪などの嗜好がキャラクターとして重ならず、違和感がありました。
観賞後、気になって事件記録を読み、実際の犯人に寄せた結果だとわかりましたが、無理に寄せない方が良かったのではないでしょうか?
犯行動機の安直な優生思想を観客に投げ掛ける崇高なテーマにしてしまったのはモヤモヤします。
聾唖者の恋人の存在はコミュニケーションの可否を犠牲者の選別に用いた犯人の身勝手さを際立たせる装置となっていました。フィクションに舵を切るのなら、普通の感覚の持ち主が、異常な思考に落ちていく過程を描いた方が良かったと思いますが、宅飲みシーンの異様さに「元々おかしな人だな」と印象づけられてしまいましたし、陽子の深酒発言が隣にいることで「ヤバイ人ばかりの職場だな」と思わされてしまったのも残念です。
俳優の皆さんの演技が素晴らしかっただけに、現実に引きずられてしまった設定が惜しいと思いました。
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