「歴史的事実に関わる伏線的物語がちょっとてんこ盛り過ぎ?」6月0日 アイヒマンが処刑された日 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史的事実に関わる伏線的物語がちょっとてんこ盛り過ぎ?
タイトルに俄然に興味が沸き、劇場での予告編を観てから観たいと思った作品を鑑賞しました。
で、感想はと言うと…ちょっと思っていたのと違うかな。でも面白くない訳ではなく惜しい!と言う感じ。
窃盗癖のある少年ダヴィッドが鉄工所で働く中でアドルフ・アイヒマンの処刑に間接的に関わっている話しかと思いきや、そこがメインではなく、様々な人々の思いや物語が絡み合っていく。
アイヒマンを題材にした映画作品は多数あるが、それだけで言うとこの作品は既に今更感はある。
だけど、タイトルが秀逸でこのタイトルだけで観たい!と思わせる。
また本来の本筋ではそこに間接的に関わっているのが少年と言うのが良い。
劇中でもそんな事実は確認されていないと明言されているけど、そこはフィクションの域で様々に考察するのが面白いと思う。
また、観れば分かるけど、様々なテーマと言うかポイントが絡み合っていて、アイヒマン自身はあくまでも切っ掛けでありメインストリームでは無い。この点だけでも興味をそそられるのが良いんですよね。
・極秘裏に処刑されるアイヒマンとその遺体を焼却する焼却炉の製作。
・少年ダヴィッドがどの様に焼却炉製作に絡んでいくのか?
・アイヒマンの処刑までの数日間。
興味をそそられるポイントがあれもこれもとあるんですが、なのにオムニバス的に様々なポイントを取り入れ過ぎてしまい、本筋がボヤける感じがしてしまい、105分と言う決して長くない上映時間に中弛みを感じてしまう。
個人的にはダヴィッドが関わる点をもっとメインにすべきの方が良かったかな。
いろんなオムニバス式的な話が入り込んでいて、ダヴィッドの心情の流れが薄くなり、あれだけ鉄工所で働くダヴィッドがいつの間にか鉄工所の人気者で若頭的な存在になっている辺りが唐突なんですよね。
また、鉄工所の社長が焼却炉製作が終了した途端、ダヴィッドにクビを言い渡す辺りは考察ポイント。
その後、中年になったダヴィッドがWikipediaに自分がアイヒマンの遺体焼却の焼却炉製作に関わった事を掲載して欲しいと嘆願するが、そのような事実は確認されていないと脚下されるが、何故社長は急に手のひらを返すかの様にダヴィッドに冷たくなったのか?
・用が済んで必要が無くなったからバイバイ
・これだけの極秘裏の重要案件がバレる事を怖れて、一番バレそうなダヴィッドを直ぐ解雇
・盗みを働いてしたから最初から信用してなかった
・ダヴィッドの今後のことを考えて、解雇した
理由はいろいろありますが個人的には4番かなと。
イスラエルにとっては大犯罪人であっても、敵国だったドイツの当時では英雄的存在のアイヒマンの処刑に関わった事でダヴィッドに被害が及ばないようにとの考慮なのかと。
勿論ダヴィッド自身はフィクション(であろう)と思うのでこの辺りの考察はご愛敬で、こういった考察が映画の面白さかと思うので意図的に入れたのではと考えますが、中年なったダヴィッドは…これで良いのか?という感じでしたw
ちょっと思っていたのと違う感じではありますが、様々なアイヒマンの映画の中ではメインディッシュをメインとしない面白さはあるかと。ただバイキングでシェフが他の料理に力を入れ過ぎただけかとw
歴史的最重要戦犯でもある様々なアドルフ・アイヒマン映画作品を観ている人には様々な考察の1本としては観る価値はあるかと思います。