栗の森のものがたりのレビュー・感想・評価
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栗が川を流れるだけで感動させる力がある映画
不穏なおとぎ話であった。ショットの完成度が非常に高い。どのショットもばっちり絵になっていて、それらを観るだけでも感動できる。冒頭の穴を埋めているシーンはややスローモーションをかけているのか、なんだか超現実的な白日夢のような美しい雰囲気。特に好きなのは、たくさんの栗が川を流れていくショット。ただ栗が流れているだけなんだけど、自然の摂理のようなものを強烈に感じさせて大変に印象深い。
舞台はイタリアの国境近くにある村で厳しい寒さに襲われる土地。一人息子がでていき、病に伏した妻を介護しながら生活している老人、夜中に医者の所に連れて行ったらそっけない対応をされるときのわびしい感覚。身を斬るような寒さと人の心の冷たさを融解するのは、自然の美しさと帰らない夫を待つ美しい女性との出会い。栗の森が二人を結び付ける。その出会いが現実なのか、幻想なのかもよくわからない。寓話と現実が入り混じる桃源郷で見る夢のような作品。美しい幻想に浸れる至高の時間だった。
"ヤブ医者"
内容が僅少だが、僅少なだけに、情報量の多い映画では与えられないよう...
なんのことやら、さっぱりわからん。
映画の予告編を観て、鑑賞をそそられた。鑑賞前に他のレビューを読んで、これは観る人によって評価が別れる作品だなと感じた。
鑑賞してみると何が言いたいのが私には分からない作品だった。時代背景も現代なのか19世紀なのか分からない。馬車、ランプが出てきて昔の話と思いきや、裸電球、電話、自動車が現れて現代(但し、50年前)の設定だと判明する。追想、夢、白昼夢、幻想、幻覚と入り乱れ脈絡なくて話が分からなくなる。美しいショットもあるが、他のレビューアーが言うほど私には多くはなかった。冒頭と最後の方に同じ映像が流れる。棺桶を収めるべき墓穴に棺ではなく、いが栗を埋めるのだ。この栗は生命(または自然)の象徴であって、人間もその一部でしかないと言っているのではないかと思えた。背景に絶えず自然音が流れているし、洗面器に溜められた水から波の音が聞こえる。
観る人によりいろいろな解釈ができる映画に監督はしたがったかもしれないが、私には何のことやら、さっぱりわからない。。思わせぶりが高い映画で、監督はこの作品を理解できるかとほくそ笑んでいるかもしれない。バロック美術の影響を受けていると書かれたレビューもあった。でも私はあまり感じなかった。
シルヴィ・バルタン
死ぬほど眠かった…
イタリアとユーゴスラビアの国境あたりの山村、1950年代。 妻に先...
こういう映画を大切にしたいなぁ。
わくわくドキドキさせてくれる映画じゃないです。
自然のなかで慎ましく生きてきた人達が、色々な形でその地を去らねばならない時、その土地の木や土を、、栗の木を慈しんでいるような映画です。
スロヴェニアの地理や歴史をチラ見したけど、アドリア海にちょこっと面した、政治的に不安定な地域に隣接し右に左に翻弄された小国という感じで、そこを去る人、残る人の気持ちは比較的安定した島国日本産まれの私には到底想像する事もできないのでした。
なんかダムに沈む産まれた村を去る、、感じかなぁ、、、。
幻想や夢が入り混じって、何やら見づらく感じる人も居ると思いますが、この状況で頭の中にある事を視覚化したらこんな感じかなと、、、。
初長編の監督で演出にちゃめっ気も有り、音楽も今風だったり。かとおもうとパゾリーニやタルコフスキー見たいな巨匠ぽい素敵な絵とか、今後が楽しみな監督です。
死にそうな妻を病院に連れて行く老棺桶職人の目が綺麗で見惚れてしまいました。
始まっていきなりでてくる2匹のファイアーサラマンダーは分布的に基亜種のSalamandra salamandra salamandraかなと思う。
栗のお墓
栗葬
枯れ葉は人生喪失のメタファー
『WANDA/ワンダ』、続く『ノベンバー』、『私、オルガ・ヘプナロヴァー』と、クセがありすぎる作品を提供するクレプスキュール・フィルムらしい1本。
イタリアとユーゴスラビアの国境地帯にある枯れ葉だらけの小さな村を舞台に、守銭奴で息子の帰りを待つ老大工と夫の行方を探す女がひょんな事で知り合い、ディケンスの『クリスマス・キャロル』を下地にしたような寓話が展開する。
監督はスロヴェニア出身で、第二次大戦後、貧困と政治的緊張により故郷を去った村民への哀愁・望郷の念を込めたという。とにかく絵画のような画づくりが特徴的で、『ノベンバー』を彷彿とさせる。テルミンが奏でる劇伴も相まって荘厳なムードで進むのかと思いきや、序盤で老大工が興じる「モラ」と呼ばれるハンドゲームの描写が妙に荒々しかったり、シルヴィ・ヴァルタンの『アイドルを探せ』に合わせて踊るシーンがあったりと、掴みどころがない。
枯れ葉はまるで人生の喪失感を表しているかのよう。日本公開は10月との事で、枯れ葉が目立つであろう秋に観るには最適かも。
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