「自分はやっぱりただのオタクなんだと分からされた」ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章 野々ノノノさんの映画レビュー(感想・評価)
自分はやっぱりただのオタクなんだと分からされた
純粋に感動した。その感動は、「ちゃんと」面白いものを作ろうとしてくれた制作者、スタッフの皆さんに対する感動だった。ラブライブ!シリーズが好きで無印の頃から応援していたけれど、失望させられることが多く、記号や比喩ばかりを騒ぎ立てて盛り上げる界隈にもうんざりしていた。その点虹ケ咲はちゃんとストーリーを作ってくれていたと思うけど、やはり登場人物全員に見せ場を作らなければいけないから枠内に収まった構成になりがちで、平均点の高い優等生的な出来上がりにやや物足りなさも感じていた。だから映画でも大体こんなものだろうと当たりをつけて、章分けして動員確保するのもいかにもラ!運営のしそうなことだななんて思っていた。
申し訳ありません。めっちゃ舐めておりました。
まず虹ケ咲特有の領域展開が沖縄という舞台と映画にすごくマッチしていた。とってつけたように沖縄……なぜ……と思っていたけど、めっちゃ映える。アニメーションならではの演出方法に沖縄らしい背景、各キャラクターの心象が重なるとこんなにワクワクさせるような出来になるんだなと。エントリーの演出も面白いし、そこからノンストップでMVが流れるとこれだけのために映画に来る価値あるなと思う。虹ケ咲はもっともっとMV見たい……永遠に。
また、アニメシリーズで感じていたことでもあるけど、物語の展開が凄く自然。本作品において初めての登場となるキャラクターの入りも違和感がなく、虹ケ咲の面々との絡みでも無駄がない。ぽっとでにならずちゃんと話が作られている。しかも「競い合う」というテーマにわずかな葛藤が生まれている中でエマとの共演をさせることで、「らしさ」に説得力が生まれていた。この「らしさ」という言葉がなんちゃってになっている作品ってたくさんあると思うけれど、その意味がないがしろになっていないことに感動すら覚えた。
「仲間でライバル」という言葉も同じ。歩夢とランジュの二人の絡みがこんなに解像度高く、その言葉を体現してくれるものになるとは思わなかった。「私はスクールアイドルになるために海を渡ったけど、あなたはスクールアイドルを広めるために海を渡った」。このセリフが二人のことを端的に表すとともに、ランジュがライバルとして歩夢を意識している理由が明言できている。なんかこれを聞いたときになんか凄く感動してしまったのだけど、多分制作陣がちゃんとキャラクターのことを考えてくれているんだなと思えたからかもしれない。
それから何といっても物足りなさを感じていた部分が、映画という媒体によって逆に解消されていたこと。120分前後の尺で一本のストーリーに軸を通し登場人物全員に華を持たせるのはとても難しいことだと思うのだけど、それを6人+αに絞ることでその課題を上手く解消していた。それが前述した無理のなさにもつながっているし、絞った分だけキャラクターの個性が十二分に発揮されている。作り込みも丁寧で綿密。これが章分けされた理由なのかと、先入観を持った愚かな自分を恥じた。スクフェス愛、虹ケ咲愛も強く感じ、ラ!を追っていて良かったと初めて思えた。伏線も細かくはられているし、これだけの出来を披露されたら次も見ないでは済まされないだろうと思っている。
凄く良かった。公開終了するまで何回でも見たいです。