「父子という最も身近な理解者であり、ライバルでもあるふたり」ふたりのマエストロ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
父子という最も身近な理解者であり、ライバルでもあるふたり
父子そろって人気と実力を兼ね備えたオーケストラ指揮者という特殊な立場のふたりを描きつつ、そのストーリーの基本軸は父子モノならではのシンプルな流れによって貫かれている。クラシック音楽好きにはこの設定、キャラクター造形、それに観客によって埋め尽くされた劇場の臨場感など、たまらないものが多いのではないだろうか。本作はイスラエル映画『フットノート』のリメイクにあたるが、実のところ設定は全く違っていて、よくもまあ、こうしてクラシック音楽の世界に応用したものだと、その脚色力には感心させられる。一方、物語の要である”人違い”は、コメディの典型として本来ならクスクス笑いすらこみ上げる部分だろうが、父役のアルディティのうまさゆえか、ちょっと気の毒になってしまうほど人間味と哀愁が浸み出している。結局のところ、二人は親子として、音楽家として分かり合えたのかどうか。落とし所に納得できるかどうかも評価が分かれそう。
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