「固唾」イノセンツ なつさんの映画レビュー(感想・評価)
固唾
ポスターからしてやばかったのだが、序盤から、あ!これ鬱になりそう!ってざわざわした。
大友克洋先生ですか…なんとなく納得。
舞台は団地、引っ越してきた家族。
優しい両親と自閉症の姉アナと妹イーダ。
両親の目はアナに行きがちなのは仕方ないと思うのは大人の目線であって、当のイーダは不満たらたら。
子供だからといってもやり過ぎ感がすごい。
アナを気遣う優しいアイシャ。
彼女は心が読めるだけに、アナの気持ちを代弁しそれを外に発するよう促す。
イーダもきっとアイシャを通してアナにもきちんと目に見える感情がわかり嬉しかったのだろう。
バケーションでほぼ住民のいない大きな団地。
イーダが最初に友達になったのはベンジャミン。
少しのサイキック能力はあったが、イーダやアイシャ、アナと遊んでいるうちに力が暴走し始める。
もともと、母親の愛が薄く冷蔵庫を見る感じとても貧しそう。そりゃすごい力を持ったら闇堕ちしますよ。
悪口言うなっ!て「さん付けろよデコ助野郎!」くらいの勢いでやってきたらすごい力出てたよ!みたいな。これも俺の力なのか〜的に母親を死に至らしめる。なんか童夢もそうなんだけど、鉄雄味を感じたかな〜
心の読めるアイシャはベンの心も分かるが敢えて告げない。彼の闇に気づいていたのだろう。
不穏な音楽、カメラアングル、セリフ説明のあまり無い描写など何をとっても終始固唾を飲む。
子供達の表情もとても良い。
舞台の団地が様々なアングルで撮られていて、その大きな団地に潜む問題を象徴しててとても心に残る。
イーダを守るため、1人外に出るアナ。強く眩しい光が彼女を包む。
対抗して陽に当たり影を強調させるベン。
池を挟んで対峙する2人。握る拳。
すでにバケーションから帰ってきた沢山の住民達の中、静かなバトルが始まる。
共鳴する子供達。
唯一、力を持っていなかったイーダの覚醒。
姉妹の握り合う力でベンは1人きりブランコの上で力尽きる。
全てが終わった後、日常を取り戻す団地の風景。
また磁石ボードでグシャグシャと線を描き始めるアナ。
母に縋り泣きじゃくるイーダ。
最後、アナはガシャっと白紙にする。
それは今まで無意味にやっていたそれではなく、何かの意思を感じられた。
ひょっとしたら、様々な事情を抱えるこの団地で第二、第三のベンが生まれてくるのかもしれない。
ただのサイキックバトルではなく、障害を持つ子供の親、片親、DV、移民、貧富、などの附属物もあり考えさせられる話にはなっていたけど結局、子供達は親に振り回されているだけの話なんだなと…
ネッコは許さない…
子供の好奇心って怖いよね。