「死に触れて成長する子どもたち」イノセンツ 故障ちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
死に触れて成長する子どもたち
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この作品で能力を使う子どもたち(イノセンツ)は障碍を持っていたり、社会的差別を受けている。
不自由なぶん、精神のエネルギーはとても強く、能力が芽生えたのだろう。その能力は死に触れることで増幅することが描かれている。
ベンは母親を殺したことがトリガーとなり、サイコキネシスの能力は人を自由に操る能力にまで昇華した。
寺山修二監督の映画に「田園に死す」という作品があるが、これは田舎でくすぶる少年が未来からきた自分自身に母親殺しを諭される話。"少年が一人前の男になるには母親を殺して一人立ちするしかない"という昭和臭くも、核心をつくような思想が主題となっている。
母殺しによってベンの能力がレベルアップするのは、退路を絶ちきった固い決心によるものだと思う。
憎らしくも、大切な母親だが、ベンにとっては消さなければ前に進めない大きな障壁だったのではないだろうか。
アナはアイラの死によって身の危険を感じ、ベンを殺そうとするも、未遂に終わる。そして、報復として車に轢かれ足を負傷してしまう。
数日後、窓の外で睨み付けるベンを見て、イーダはおもむろに走りだす。
アナはイーダを守ろうにも足の石膏が砕けず、狼狽するが、そんなとき超能力で石膏が割れ、足も完治する。
もともとアナには自発的な能力は備わっておらず(他人の能力を増幅させる力はある)これもまた、死に触れた際の瀬戸際の体験が能力の進化を促している。
ベンを友達ではなく災害と認識し、殺す決心ができたのはアナが人の死に触れたからだ。
大切な友人、親、或いは恋人でも、抑圧しなければならない。そのためには殺害も厭わない。
大切なものを絶ちきってイノセンツは大人になる。
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