「【夏休みに”或る能力”に覚醒した子供達4人の、無垢故に善悪の区別が曖昧な中”或る力”を暴走させて行く少年や、子供達の関係性の変遷を不穏極まりない雰囲気で描いた北欧サイコキネシス・スリラーの逸品。】」イノセンツ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【夏休みに”或る能力”に覚醒した子供達4人の、無垢故に善悪の区別が曖昧な中”或る力”を暴走させて行く少年や、子供達の関係性の変遷を不穏極まりない雰囲気で描いた北欧サイコキネシス・スリラーの逸品。】
ー フライヤーに記載されている通り、今作は大友克洋の名作「童夢」へのオマージュに満ちている。ー
■「童夢」・・一応概要を記す。
ボケてしまったチョウさんの住む”団地”に、悦子と言う女の子が越してくる。怪事件が多発していた団地の中で”悪戯”をしていたチョウさんに、悦子はチョウさんを上回るサイコキネシスでチョウさんの”悪戯”を止めようとする。
ラストの公園での二人のサイコキネシス対決は、名シーンである。
*今作と「童夢」との関係性
チョウさんは誰が見ても、一線を越えて善悪の区別がつかなくなった強力なサイコキネシスを得たベンジャミンである。
そして、悦子は、悦子と同じく団地に越して来た、イーダと強力なサイコキネシスの能力を持っていた自閉症の姉のアナである。
今作は、そこにアイシャという自分の意思を告げられないアナの代弁者であり、且つ凶悪化したベンジャミンに対し、怒りを持つようになった女の子が重要な位置づけで描かれているのである。
◆感想
・冒頭、イーダと姉のアナが郊外の団地へ向かう車の後部座席に乗っているショット。
ー 陽光が降り注ぐ中、イーダはアナの足を抓る。だが、アナは表情を変えない。アナが自閉症である事が、この後語られる。
団地に越してからも、イーダはアナの靴の中に割れたガラスを入れる”悪戯”をする。イーダは母に構って貰えない理由をアナの所為にしているようだ。-
・イーダは団地で、一緒に遊ぶようになったアイシャ(黒人だが、白斑に罹っている。)とベンジャミンとで、石を垂直に落としてそれを別の方向に曲げる”遊び”や木の枝を折ったりする”遊び”をしている。
ー 最初は”遊び”だったのが、思考を共有していく子供達の間に起こる摩擦。
特にアイシャは口の利けないアナの思考が良く読め彼女の代弁者となる。ー
■そんな中、ベンジャミンの”遊び”が残忍化していく様は恐ろしい。
元々猫を階段の上から落としたり、その猫の頭を踏みつぶしたりするベンジャミンの残虐性ある性格が、徐々に暴走し始める。
口うるさい母に対し、料理中に頭にフライパンをぶち当て昏倒させ、煮えたぎるスープが入った寸動鍋を母親にサイコキネシスで動かし掛けるシーンは、可なり怖い。
更に彼は、或る男を操り且つて、サッカーの時に彼を揶揄った14歳の少年を襲わせ殺し、サッカーをしている少年たちの一人の足の骨をへし折るのである。とても怖い。
ベンジャミンのサイコキネシスの暴走が始まって行くのである。
・ベンジャミンの行動に気付いたアナとアイシャはベンジャミンを止めようとするが、ベンジャミンはアイシャの母を操り、彼女を刺殺する。
ー この辺りの子供達の連動性が、コレマタ怖い。アイシャに対するベンジャミンの攻撃を察したアナとイーダは、彼女を助けようとするが・・。
又、アナのサイコキネシスの力が、実は一番強いのではないかと分かって行くシーンも印象的である。彼女が回す止まらない鍋蓋。
自分の心を読んでくれたアイシャを殺したベンジャミンに対する声なきアナの怒り。
故に、アナに対してはベンジャミンも手が出せないのである。ー
■そして、アナとイーダが、アイシャを殺したベンジャミンと対峙するシーン。アナとイーダは今や結束して手を繋ぎ、少し遠くの公園のブランコに座っているベンジャミンと、サイコキネシス対決をするのである。
そして、周囲の大人は何一つ気付かない中、ベンジャミンは息絶えるのである。
- ここは、監督の”童夢”に対するオマージュが容易に感じられるシーンである。”童夢”では、悦子がブランコに乗り、チョウさんは公園の椅子に座っている。そして、チョウさんが悦子の自分を観る怒りに満ちた姿に気付いた時の驚愕の表情。(見開き2ページ使って、大友氏はその表情を描いている。名シーンである。)-
<今作は、子供だから善悪の区別が曖昧な中、サイコキネシスを暴走させて行くベンジャミンや、それを止めようとするアイシャ、アナ、イーダの関係性の変遷も絡めて、ヒンヤリとした恐ろしさと、独特の世界観を漂わせた、北欧サイコキネシス・スリラーの逸品である。>
■2023年8月20日
親切なレビュアーの方のご指摘を頂き、一部修正しました。
いつもながら、詳細で楽しいレビューありがとうございます。
私は「童夢」を持ってるはずなのに、全く思い出しませんでした。はは
今更ながらサイキックの管理は必要だなと思います。
小さい頃、昆虫の足をもいだり、カエルの足を折ったり、ヒドイことをした記憶がありますが、さまざまな体験の中で、人間として「まとも」になれたように思います。しかし、幼い子供が強すぎるサイキックを持てば・・・こうなるよね。
ところでアイシャは白癬ではなく白斑と思われます。マイケル・ジャクソンと同じですね。
NOBU様コメントありがとうございます。
童夢は読んだ事がなかったんで本日、本屋に行きましたが、見つからず・・・また神保町かなあ・・・
漫画までお詳しいんですね。流石です。
台風にご注意下さいね。
「童夢」、読んだことがなかったのですが、そんなに一致する部分があるのですね。すごく為になりました。探究心が強く、恐れを知らない子どもであることが恐ろしく、サイコキネシスも絶妙に生かされていました。本当に、見るのがキツかったです笑 でも、何故か魅力的。今年ベスト級にお気に入りです。
こんにちわ!お疲れ様です!
童夢気になりますね~
楽天で検索したら売ってたので気が向いたら買って読んでみます!
数年前に田村淳の「母ちゃんのフラフープ」って本を買い、手元に置いてあるんですけど未だに1ページも捲ってないんです....こんな感じの私なんで(笑)
暑くて大変ですが仕事頑張って下さい💪💪💪
こんにちわ~
NOBUさん暑いっすよ~(笑)
今日曇りがちだからアイシャじゃなくて愛車を洗車したんだけど、もう動けないっす!(笑)
今日出掛ける予定がないからすでにビール飲んでまですよ~
この時間からのビールは罪悪感感じながらも最高ですね!
あと私も観賞後にフライヤーを持って帰ってきたんですが確かに「童夢」にインスピレーションって書いてあるんですが私その作品知らねぇだ!(笑)
AKIRAは何となく知ってるけどストーリーとかは全くわからねぇだよ!(笑)
仕事頑張って下さいね~