名探偵ポアロ ベネチアの亡霊のレビュー・感想・評価
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アガサクリスティというよりも
アガサクリスティというより、西洋版横溝正史の世界みたい。
アガサクリスティにしては「そんなアホな」という犯人じゃなかったから、納得感もあったし。
ただ、最後から2つ目の死に至る理由というか経緯は無理あるけど。
あの死については、普通はもっと別の展開あるやろ。
ま、そこがアガサクリスティらしいといえはそうなんだけど。
時間は短いが、セリフは長い密室劇。動機が❓ベネチア堪能。
ケネス・ブラナー アガサ・クリスティ3部作
感想は【やっぱりアガサさんは オリエント急行だよね❗️】
背景は1947らしい、原作と変えて 水の都 ベネチア
夜のベネチア 雰囲気は最高だよね。住みにくそうだけど。
不覚にも、密室でのセリフの応酬が良い子守唄になって 半分ウトウト😪
孤児を集めたハロウィン🎃パーティー と降霊会 までの描写はそれでも
おどろおどろしくて良かった。
だが、ケネス・ブラナー ポアロ氏の畳み掛けるような追及セリフに
耐えきれず、 半落ち🟰眠りながらスクリーン眺めてた。
でもそれでも 短く感じたのは 監督の手腕か❓
アカデミー賞ミシェル・ヨー が 意外にサッパリ【コレ以上はネタバレなので言えない。】
当然お約束の謎解き 密室殺人の謎解きは行われる。
だが、ワシには、それぞれの動機が 無理クリ感、安っぽさ 感じた
【半分寝てた😪私がいうので、当てになりません。】
有料パンフレット購入したが 当然のことながら 本作は推理・ミステリーなので
当たり障りのない 腫れ物に触るようなパンフだった。パンフ蒐集家以外は不要かも【個人的感想です】
人物相関図もホームページには少し人物紹介あったけど・・・
基本、映画ツウ的な観客層でしたので、静かに鑑賞は良い。
これは、ちょっと違う。
「オリエント急行の殺人」「ナイルに死す」と過去に映像化もされている著名なタイトルから、一転してマイナーな作品(クリスティの著作が果たしてマイナーなのかはさておきw)なので、ストーリーもよく知らないままに鑑賞しましたが、どうやらそういう人が多いようですね。
根本的に前二作と違うのは、既に原作も読んでいる上に映像化されたものを見ているため、こちらとしては「どのように料理されているのか」という興味が、今回は「どんな料理が出されるのか」という期待と不安が相半ばする気持ちだった事。これは映画を観る上で大きく印象が変わってくる。
そして出されたものが、ミステリーと言うより、ゴシックホラーのようなテイストだった訳です。うーん💦
エルキュール、ポアロと言う合理的な思考による推理を是する探偵が、ある意味で超常的な部分を受け入れたというその点において「これは違う」と叫びたくなったのは、私の勝手な思い込みなのだろうか。
ホラー要素が強いミステリー。
『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』鑑賞。
*主演*
ケネス・ブラナー
*感想*
原作は未読。
オリエンタル急行とナイル川は鑑賞済みで、まさか新作がこんなに早く公開されるとは!
今回の舞台はベネチア。探偵を引退したポアロが知人の作家から降霊会に呼ばれ、そこで不可解な事件に巻き込まれてしまう話。
今回のポアロは、ホラー要素が強めな印象。いきなり大きな音が鳴ったり、驚かせる場面が結構あったので、何回もビビッてしまいました。(笑)
霊媒師役がミシェル・ヨー。ポアロは、霊媒師に対して、案の定、霊など存在しないと一刀両断。登場人物たちの思惑や限られた空間の中で、しっかりと事件が起き、そこでポアロが事件に挑む所が良かった。伏線が張り巡らされていたけど、ポアロが一瞬で閃くので、あっさり気味だったけど、ちゃんとしたミステリーで、個人的には面白かった。
江戸川コナンみたいな少年が可愛らしかったな。
ポアロシリーズは結構好きなので、次回作があったな観たいな~
ポワロものにする必要あったのかな?
映画の撮影地、雰囲気、セット、映像、俳優の演技等は素晴らしく、一つの探偵映画として良い作品だと思います。
原作の「ハロウィーン・パーティ」を読み、デヴィッド・スーシェ主演のHallowe'en Partyを見てから、違いを楽しむべく映画館へと行きました。
ここからは、ネタバレとなります。
原作とあまりにも内容が違っていたので、なんでポワロものにしたんだろうと、正直思いました。
原作ではのどかな田舎町でハロウィーンをきっかけに、子供達が殺されていく。
目的のためなら、子供を殺すのも厭わない犯人がのどかな町で殺人を繰り返す恐ろしくも魅力的な作品です。
本作では、非現実的なオカルトの世界の中での殺人を扱っています。
舞台が一つの建物に限定され、一晩で人が殺されていきます。
登場人物と設定が原作と違っている点があるので、殺されるのも違う人、殺す動機も違うし、殺し方も違います。オリバ婦人ともあんな関係になっちゃうし、原作との乖離がすごいです。
ハロウィーン・パーティに強い影響を受けて作った新作品といった感じです。
だからタイトルもハロウィーン・パーティではないのでしょう。
探偵はポワロである必要はなく、普通の探偵映画で良かったんじゃないかと私は思いました。
ポワロもある事がきっかけで、灰色の脳細胞がうまく作動せず、オカルトにも惑わされ、
らしくない姿を晒します。最終的には、いつものポワロに戻りますが。
クリスティファンからすると、賛否両論の映画になると思います。
ホラーサスペンス映画
シリーズ前2作は、世界的ベストセラーの原作やそのファンたちに気を使いすぎてか、少し遠慮気味で窮屈な感じもありました
ところが今作では、原作の『ハロウィーンパーティ』を大胆にアレンジして、ホラー要素をより強調したものに
なので、アガサ・クリスティーの熱狂的なファンには受け入れがたいものかもしれませんが……
結果的にスリルとサスペンスが全編に貫かれ、ホラーミステリーとして楽しめる上質な作品に仕上がったように思います
また、シリーズ共通の映像の美しさは今回も健在で、美しいベネチアの景色を堪能できますし、今までの中でも一番の完成度ではないでしょうか
改変によって爆変した傑作
字幕版を鑑賞。主演俳優のケネス・プラナーが監督と製作も兼任したアガサ・クリスティの名作のリメイクで、「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続く3作目である。
クリスティの原作は「ハロウィン・パーティ」で、イギリスの田舎を舞台として、少女の死亡事件をポアロが推理で解明する話である。伏線と回収こそ多いものの、メルヘンチックで他作品のような劇的展開にはやや乏しいのが気になっていたが、舞台をヴェニスにして登場人物にも大きく手を入れることによって非常にホラーテイストで劇的で面白い作品に変貌を遂げていた。ホラー描写もかなり上出来だった。
今作のポアロはいつになく冴えがなく、合理主義者のはずなのに亡霊の姿や声に怯えるようなシーンが目につく。実はそれも犯人の仕掛けによるものなのだが、見ている方まで心配してしまうほどだったのは、観客がまんまと監督の罠にハマったことになる。非常に秀逸な方法だと思った。
暗い場面が多いが、それでもヴェニスの美しさは十分に感じられた。それもそのはずで、舞台となった建物は出来合いのものではなく、この映画の撮影用に、蝋燭での撮影が綺麗にできるようにとわざわざ建てられたものだそうである。原作通りに舞台がイギリスの田舎だったらこの味わいは出せなかったに違いない。「オリエント急行」と「ナイル」での改変は僅かだったので、リメイクの意義がどの辺にあるのかと思わずにいられなかったが、今作はリメイクによって爆変したと言っていい。
怪しげな霊媒師役にアジア人初のアカデミー賞女優となったミシェル・ヨーを起用するなど、俳優陣が実力者揃いなのは、製作に名を連ねたリドリー・スコットの手腕かも知れない。誰一人として凡庸な役がなく、いずれも印象強かったのはまるでシェイクスピア劇のようだった。
通常の映画より音楽が鳴らされる場面が少なかったのは、見る者に当事者意識を強く持たせるためだろうが、劇中で流される音楽は雰囲気をよく保っていた。作曲者は誰かと思えば、「ジョーカー」でアカデミー作曲賞に輝いた女流のヒドゥル・グドナドッティルだった。流石だと思った。
謎解きよりもホラー描写に力を入れたような作風は好き嫌いがあるかも知れないが、演出の意図は一貫していた。建物から思い通りに作ってしまうほどの、この監督の意図が汲めない人だけが貶しているのだと思う。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4= 100 点。
灰色の脳細胞が冴え渡る
ポアロシリーズ三作を見てきましたが今回の話が1番好き。
タイトルにあるように亡霊なので少し怖い感じの演出になってました。それにしてもポアロ役の人のかっこよさ。見事なストーリーに推理。最高でした。
若干ホラーっぽいのと舞台が夜なので少し暗いですが雰囲気が良いし見やすかったと思います。
ベネチア行きたい👢🇮🇹
ミステリーの女王 アガサ・クリスティ📖´-
過去2作品も鑑賞しましたが
やはりナイル殺人事件が1番好みでございます。
今回はミステリーだとわかっていても
ホラー色(心霊系)が強くて、なんなら
ホーンテッドマンションよりも怖いです🤣
だからなんだか今までと作風が違うなぁ。と
思ってみたり。
原作は未読なので、世界観がどうなのかはわかりませんけども。
今回、ポアロの推理力が頼りなげです💦
ラスト、怒涛の推理を語りだすまで
「え、全然気がついてなかったでしょ?!」
みたいな(笑)
まぁ面白いんですけど、一作目は越えなかったかな。
怪しい霊媒師にエヴエヴのミシェル・ヨー
精神病んでるパパを支える息子には
ベルファストのあの男の子ジュード・ヒルが出てますよ😆
彼が何よりも良かったです😆
ケネス・ブラナーの秘蔵っ子ですかね🤔
演技もめちゃくちゃよい🙆♀️将来楽しみ♥️
あとイタリア ベネチアは美しい👢
いつか行ってみたいなぁ🇮🇹
ご立派な付け髭。
水上都市ベネチアに住む探偵オヤジの話。
ある女性作家が探偵ポアロの元へ…その作家とのやりとりから、色々と問題のある屋敷へ足を運ぶことに…
オリエント、ナイルは観てないんだけど鑑賞。作品が悪い訳ではなく私の好みの問題なんだけど…何かずっと眠かったです(笑)
天井から落ちてきたシャンデリアの音、ホントに焦ったから!寝落ち気味だったので(笑)
とりあえずDisney+でオリエント、ナイル観てみようかな~
ベネチアンマスク
1947年、引退しベネチアで暮らすポアロが参加したハロウィンパーティの後の降霊会で殺人事件が起きて真相を究明することになる話。
未読だけどハロウィーン・パーティって作品が原作なんですね。
仕事は引き受けずお菓子を食べるのを生き甲斐にしているポアロのもとに「あの作家」が訪ねて来て、自分に解けなかった霊媒師のトリックの解明を挑まれて巻き起こっていくストーリー。
冒頭からいきなりジャンプスケアでホラーですか?
ことが起きてからも見えたり聞こえたりと、えっ?やっぱりホラー!?が連続する中、過去の少女の転落を絡めつつ、ちょっと弱気なポアロが謎を追っていくけれど、やっぱりほぼ会話劇(´・ω・`)
まあ、そういう会話の中にもタネは散りばめられてるからある程度は仕方ないけれど、やっぱりマッタリでちょっとダルい。
そして見えたり聞こえたりの正体も、これならある意味何でもありだからねぇ。
今作も哀しいお話しが絡んできて、そういうところは良かったけれど、イマイチ自分にはハマりきらなかった。
ポアロ対女霊媒師! 霊の実在をめぐる知的闘争の果てに呪われた館で見出した真実とは。
なかで出て来た「アダムとイヴの原罪からくり時計」、超かっこいい! 超ほしい!!
ケネス・ブラナーのポアロ・シリーズ第三作目。
前二作は視聴済み。
今回の原作にあたるクリスティーの『ハロウィーン・パーティ』も既読。
というか、ちょうど手元にあったので、この機会に封切り前に読んでみた次第。
今までデイヴィッド・スーシェのドラマ以外で映像化のない珍しい原作選択だが、実際には親本とは似ても似つかない内容で、ほぼオリジナルといっていい。
発端の依頼者だとか、登場人物名とか、一部のキャラクターとか、原罪の象徴としてのリンゴとか、いくつかの要素だけつまみ食いして、あとは自由に創作したみたいな構成であった。
出だしは、
「なんで引退したポアロがヴェネチアに住んでるんだ?」
(原作では晩年のポアロはイギリスの片田舎に隠棲したはず)
「ボディーガードのラリアットネタとか、いきなりちょっとサムいんだけど」
「アリアドニの誘い出し方が強引すぎるし、こんなんでポアロのこのこ出かけるの?」
「結局、霊媒ハンター話がメインで、まるでハロウィーン・パーティ関係ないじゃん」
「なんでヴェネチアで地元の孤児相手に英語で劇やってて、みんな英語でしゃべってんだ? そもそも旅先でもないのに、ヴェネチアで集まってくる登場人物が全員英国人っておかしくないか?」
などなど、前二作に比べるとえらく雑なつくりだなあ、というのが正直な感想だったのだが、思いがけずポアロが襲われてからは、ぐっと引き込まれた。
なお、原作では、イギリスの田舎町で子供たちを招いたハロウィーン・パーティが開催され、そこで「リンゴ食べ競争」(手を使わないで水に浮かべたリンゴを食べるゲームで、英国のハロウィーンでは一般的らしい)用の水をたたえたバケツで少女が溺れ死にさせられる。少女は殺される直前「あたし、そういえば昔人が殺されるのを見たのよ」という自慢話をしていた。で、現場に居合わせたアリアドニが、ポアロのところに飛んできて、事件解決の依頼をする、という流れ。ね、なんかいろいろうまく入れ替えたり魔改造してるでしょ? あのリンゴ浮いてる水に頭突っ込まれるのは、ポアロじゃなくて、被害者の少女なのだ。ちなみに原作にヴェネチア成分はゼロです(笑)。
なにはともあれ、ケネス・ブラナーがやりたかったことは明快だ。
「ど真ん中ストレートのお屋敷ミステリ」。
しかも「お化け屋敷(ホーンテッド・ハウス)もの」。
さらには「嵐の山荘もの(クローズド・サークル=誰も出入りできない環境下での連続殺人)」!
で、その試みはそこそこうまくいっていると思う。
魔界都市のごとき、妖しい気配に満ちた沈みゆく街ヴェネチア。
得体の知れない瘴気漂う、荒れ果てた奇怪な館。
幽閉された子供たちの怨霊が医者を呪うという、おぞましい言い伝え。
そこで開催される子供向けのハロウィーン・パーティと、
参加客たちが身に着ける禍々しいヴェネチアンマスク。
謎めいた東洋人霊媒が仕切る大がかりな降霊会。
そこで引き起こされるグロテスクな連続殺人と、
ポアロの必死の捜査。超常現象と亡霊は果たして本当に実在するのか?
やがて明かされる意外な真相と、おそるべき真犯人。
細かいところには不満もいろいろあるけど、
総じていうと、ふつうに面白かった!
そもそも、日本人ってこういう「お屋敷謎解きミステリ」が大好きだけど、欧米の本格ミステリ映画でここまでゴリゴリのやつってなかなかないから、それだけで基本的には大満足。
謎解き部分も、あまり触れるとネタバレになるので踏み込まないけど、相応にクリスティーらしい感じに仕上がっていたのではないだろうか。
だんだんロジカルに謎解きが進んで、とある手がかりをきっかけに最後に世界観が一変するといった衝撃性や驚愕性はあまりないが、オリジナル成分80%でこのくらいの仕上がりなら、文句をいうのは野暮というものだろう(やる気は素晴らしいけど、ほぼすべてのトリックとロジックがはちゃめちゃで超がっかりだった『ナイヴズ・アウト』とは次元が異なる)。
どうせクリスティー原作でクローズド・サークルのお屋敷ミステリをやりたいなら、『ハロウィーン・パーティ』よりもっとしっくりくる長篇があったような気もするが、いざ考えてみても意外に思いつかない。
『スタイルズ荘の怪事件』や『ねじれた家』はマナーハウスものだが、クローズド・サークルものではない。クリスティーのクローズド・サークルものといえば、なんといっても『そして誰もいなくなった』だが、あれはノンキャラクターものだ。
むしろ、必要となるアイディアの中核だけ原作扱いの『ハロウィーン・パーティ』からいただいておいて、お屋敷要素や舞台立てはいちから「創作」するほうが、ブラナーとしても作りやすかったのかな?
ヴェネチアの街の暗黒面を描いた「こわい映画」といえば、なんといってもイギリスのニコラス・ローグ監督が撮った『赤い影』が筆頭格だと思うが、そういえば、ヴェネチアを舞台としたジャッロ(イタリア製の謎解き風味スラッシャー・ホラー)って意外とないもんだなと思っていたら、最近になってスペインのアレックス・デ・ラ・イグレシア監督が『ベネシアフレニア』というなかなかの傑作を世に送り出した。
今回はアイルランド出身のケネス・ブラナー監督が、ヴェネチアを舞台とした稀少な純本格ミステリ映画――それも、王道のお屋敷本格に挑んでくれたというわけだ。
(本家のイタリア人も、もっとがんばれw)
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毎回、ケネス・ブラナー版ポアロには明確な「作品のテーマ」が設定されている。
第一弾の『オリエント急行の殺人』では、「神の正義と法」及び「復讐の大義」がテーマだった。第二弾の『ナイル殺人事件』では、「名探偵の宿命」と「愛の逆転劇」がテーマだった。
第三弾の本作の場合、扱われているのは「霊の実在性」といっていいのではないか。
すなわち、理性主義と神秘主義の対決――科学のみを信じるか、スーパーナチュラルを信じるか、という、本格ミステリにおいて根源を成すテーマだ。
われわれ日本人にとって、お墓参りやお盆の送り火など、祖霊信仰はアニミズムに根差した比較的「自然で体感的な」形で、日々の生活に滲透しているように思う。
欧米人にとって「霊魂」とは、もっと生々しく宗教と結びついた存在であり、19世紀の「科学の世紀」において、その存在を認めるかどうかはきわめて重大な議論の対象だった。
スピリチュアリズムは、決していかがわしい擬似オカルトではなく、学者や知識人が「科学」として真剣に研究する分野であり、降霊術もまた、実際にきわめて頻繁に開催された秘儀であった。たとえば20世紀初頭でもコナン・ドイルが降霊会に傾倒していった話はよく知られているし、逆に「脱出王」ハリー・フーディニが霊媒ハンターとして活躍していた話も皆さんご存じだろう。
本格ミステリのジャンルでも、降霊術・降霊会はきわめて重要なアイテムであり、これをモチーフにした著名な長篇ミステリだけでも、たぶん優に100くらいはありそうだ。
カーター・ディクスンの『黒死荘の殺人』、クレイトン・ロースンの『天井の足跡』、へイク・タルボットの『魔の淵』、ピーター・ラヴゼイの『降霊会の怪事件』、ポール・アルテの『第四の扉』などなど……。本格物ではないが映画化が素晴らしかったマーク・マクシェーンの『雨の午後の降霊術』、それからノワールと降霊術の奇妙な混淆物であるウィリアム・リンゼイ・グレシャムの『ナイトメア・アリー 悪夢小路』。ウィリアム・ホープ・ホジスンの『幽霊探偵カーナッキ』なども、霊媒ハンターものの一変種として忘れられない。日本でも、横溝正史の『悪魔が来りて笛を吹く』の密室殺人は降霊会の夜に起きてましたね(火炎太鼓がどうのってやつね)。
クリスティーにも、降霊術を扱ったミステリがいくつかある。
まずは『シタフォードの秘密』。これは、降霊術のお告げで死を宣告された人間の様子を雪の中延々歩いて観に行ったら本当に殺されていたというもので、ノンキャラクターもの。
それから『邪悪の家』。こちらは、むしろポアロの側が犯人のあぶり出しに降霊術を利用しようとする。他にも何本か降霊術を題材にとる短編があって、パンフによれば、脚本家はノンミステリのホラー短編「最後の降霊会」に影響を受けたということだ。
あと、女流作家アリアドニ(クリスティー本人が元ネタとされる)が登場する『蒼ざめた馬』(ポアロは出てこない)も、降霊術やら悪魔教団やらが出てくる実にいやな話で、メイントリックの類似性も含めて、今回の映画に影響を与えている可能性は十分ある。
ともあれ、「霊は実在するのか」という大命題に、今回ポワロは直面する。
ポアロの立ち位置は無神論者のそれに近いが、これはむしろ欧米では「珍しい」スタンスだ。
彼がいうとおり、霊の存在や悪魔の存在を認めれば、それは「神の存在を認める」ことに他ならない。ポアロは少なくとも「人の人生に介入するような神の存在を認めない」がゆえに、「亡霊や霊媒や悪魔の存在も認めるわけにはいかない」。
まわりのキャラクターはさまざまなフェイズから、ポアロに対してある種の神学論争じみた「霊の実在」に関する議論をふっかけてくる。その際たる敵が、ミシェル・ヨー演じる霊媒で、ふたりの思想的対決はさながらS・S・ヴァン・ダインの『グレイシー・アレン殺人事件』でも読んでいるようだ。
本格ミステリにおいて、作中のロジックの一環として霊的存在を最終的に認めるかどうかというのは、ディクスン・カーの『火刑法廷』以来、いろいろと実験のなされてきた試みであって、今回のポアロは結構ぎりぎりのところまで追いつめられる。
その背景には、前作『ナイル殺人事件』で試され続けた「名探偵であること」の苦悩と使命に、ポアロがもはや疲れ切り、引退を標榜するような「もともと心の弱った状態」にあったことも大いに関係しているし、さらには終盤明かされる「アレ」の身体的な影響もあって、余計に自分の内面と向き合わざるを得なかった部分もある。
最終的に、エルキュール・ポアロは、論理の刃によって事件を解決することに成功し、世界は理性の光のもとに明晰な輪郭を取り戻し、彼は「名探偵」としての矜持をふたたび手に入れる。
だが、本当に世界は、科学とロジックだけで読み解けるものなのか?
ヴェネチアという街の裏側に、街を浮かべる海の深淵に、それだけでははかれない「非日常」は今も広がっているのではないのか?
解決篇の後に感じる、得も言われぬ居心地の悪い余韻は、そんな人ならざるものの存在が引き起こしている「何か」なのかもしれない。
その他、小ネタに関して、以下箇条書きで。
●原作では住み込み(オ・ペール)女秘書が、登場人物によって「オペラ娘」と呼称されるシーンがあるが、たぶんこれが本作に登場する屋敷の女主人が「オペラ歌手」という設定になっている元ネタだと思う(笑)。
●本作では、とにかくモノがよく壊れる。そして大きな音を立てる。シャンデリア、食器、家具。ラストシーンでポアロが机の端のコーヒーカップを内に押し戻すのは、その負の連鎖は断たれた、という宣言だ。ちなみに机の端の食器は、不安定な状態を表わすとともに、西洋絵画の伝統において「メメント・モリ」(死を想え)を表わす象徴的モチーフである。
●ミシェル・ヨーのぐるぐる回る降霊シーンは、ちょっと笑ってしまうくらい鬼気迫る仕上がりでGJ。あのへん、昔の降霊術の実話とか、悪霊憑きの出てくる映画を研究して、うまく取り入れている。自分で顔をかきむしりながら「赤目を剥く」って、意外に見たことのない薄気味悪さで印象に残ったが、あれミシェルのアイディア?
●本作のミステリ要素は、「脅迫」「妄執」「過去」と、きわめてクリスティーらしいテイストで、原作者の傾向を理解した改変が成されていると思う。犯行の手法もたびたびクリスティーが取り上げたもので、脅迫犯の正体も「クリスティーごのみ」。ただしアリアドニの扱いにはちょっとびっくりした。
あまりに酷い駄作中の駄作
アガサ・クリスティに謝れよって言いたくなるほど酷かった。ハロウィンパーティーが原作って、どこにその要素が?脚本、演出、音楽、全てにおいてマイナス評価。ストーリーの展開がぶっ飛んでいてミステリーと言えたもんじゃない。嵐や屋敷内の描写が現実離れしていて、何でもありな展開。こんなんじゃ、人が瞬間移動して殺人を犯したとしても不思議じゃない。また、無駄に驚かせる大きな音が陳腐。ラストシーンもしらけただけ。エンドロール見ながら怒りの気持ちが湧いてくるほど酷かった。この映画を高評価する人の気がしれない。
観たい度○鑑賞後の満足度△ 前2作よりましかな、と期待したがやはりダメだった。『ベルファスト』のジュード・ヒル君だけがキャストの中では光っていたので★半分だけオマケ。
①『ハロウィーン・パーティ』がなんで『ベネチアの亡霊』になんね?と最初は思ったが、前2作があまりにも酷かったので、もしかしたら原作を思いっきり変えてくれた方が許せるか、と期待したけれど、結局我がアガサ・クリスティの顔に泥を塗った、という点では変わらなかった。
②原作のげの濁点くらいしか原作の面影がないので、『ハロウィーン・パーティ』を原作としていると謳うのは詐欺かと思うくらい。
アガサの名誉の為に言うと、『ハロウィーン・パーティ』は確かにアガサの作品の中では出来の良くない方だけど、こんなに不細工ではない。というか、アガサ・クリスティはこんなミステリーは書かない。ジョン・ディクスン・カーなら書きそうだけど。
アガサ・クリスティの小説というより「名探偵コナン」のマンガのエピソードのどれかを実写化したみたい。私の名誉?の為に言うと「名探偵コナン」ファンです。映画版はあまり観ないけど原作マンガは60数巻目までは律儀に買って読んでました。
③敢えてアガサの作品にこじつけてみたら、『復讐の女神』『スリーピング・マーダー』『魔術の殺人』からちょっとずつ取って混ぜ合わせて不細工なミステリーにして、最期にヒッチコックの『めまい』をちょっと混ぜた感じか。
④色んな毒を使った毒殺が得意だったアガサの向こうを張って、アガサが使ったことのない(使えないと知っていたのか)「グラヤノトキシン」というシャクナゲの花の蜜に含まれる毒を扱っているが、アガサほど毒の知識はなかったようで、ハイにはなる(幻覚症状を起こす)けど大量に摂取しても死にません。
⑤ケネス・ブラナーは確かに演出力はあるのだから、こんな不細工なミステリーではなくて、もっと良い脚本の映画を撮れば良いのに。
⑥ミッシェル・ヨーはアカデミー賞女優には可哀相な役。
ご贔屓ジェイミー・ドーナンも役不足で精彩がなく残念。
それにあんな方法で本当に人を死に追いやらせられるだろうか。
雰囲気だけで、ポワロの推理力に相応しいトリッキーさの欠片もない本格派ミステリーとはとても言えない行き当たりばったりの話としか思えない。
アリアドネ・オリヴァー夫人のキャラクターの驚くべき改悪ぶらには、それこそアガサが墓から怒って出てくるだろう。
⑦結局、映画の予習に『Halloween Party』(原書で読みたしたので、ハイ)を再読できたのが私的には良かったくらい。
全234件中、201~220件目を表示