「脇役の功績」名探偵ポアロ ベネチアの亡霊 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
脇役の功績
ポワロの推理が冴え渡る…といえばいいのだろうが、どおにも強引な印象を受ける。
話の筋自体は面白かったのだけど、編集がどおにも気に入らない。
なんか妙なアングルと妙なレンズが多様される。昭和の日活映画を観てるようで、どうにもいただけない。
それらは幻覚を表してるのかもしれないのだけれど、時折挟まれるポワロのUP…パッと視線を送るって事なのだけど、これもまた微妙。
頑なに超常現象を否定するポワロは、その種を悉く看破していく。
降霊術師も8割くらい論破
その降霊術に加担した小説家と助手も論破
数年前の娘の飛び降りも論破
その夜に起こる殺人事件も論破
何を糸口にしているのかさっぱりわからないのが厄介で…更に言うなら、彼は真犯人の計略で幻覚状態にもあるらしい。
時折出てくるオカルトっぽい部分は幻覚みたいだ。いや、幻覚と思い込みたいだけだろうって結果でもあるのだけれど、頑固な英国紳士は1ミリたりとも表層的には譲歩しない。
このオカルトパートは、それなりにセンスが良くてベネチアの雰囲気と相まって趣深い。衝撃音のSEがけたたましくはあるのだが。
ただ…幻覚状態だったと仮定して、なぜ少女だけが幻覚だと断定できるのだろうか?そもそも何故少女限定の作用なのだろうか?特定の幻覚を見せるような成分はないと思われる。
だとするなら、彼の慧眼にはフィルターが掛かってるはずで、そこを無しにして推理を構築するってのは傍若無人ではなかろうかと。
今回は特にそうなのだけど、全く接点のないと思われてた砂粒程の事柄を繋いでいって線にするみたいなとこではあるのだけれど、その繋ぎ方が卓越した想像力の産物のようで困る。爽快さがあまり…ない。
なんかシラ切り通せるんじゃないかと。
告発されてる側からしたら、自分しか知らないような事を悉く言い当てられるのだからたまったもんじゃないのだろうけど。
で、ここで考えるのが、ポワロは何を足がかりにその卓越した想像力を働かせるに至ったかなのだけど…観てる俺からすると「そう言われてみればアレってそう言うフリなのかな」なんて事を思うわけ。
だとするなら、この映画の見所ってのはポワロの推理じゃなくて、ポワロにそのヒントを与える脇役の演技こそが見所なのかなぁと。
明確なポイントを映さない分、脇役がズレた事やってたら不具合しか残らないもんな。
ポワロ作品って団体芸だったんだなあー。
そんなに怖くはなかったけれど、ベネチアの雰囲気はとても良くて、冥界の門でも開いてそうでいい感じだった。
なんだかんだ言っても、頑固で偏屈でキレ…今回はそんなにキレなかったか。年老いて丸くなったのかなw
でっぷりとしたポワロより、こっちのポワロのほうが好き。