「爽やかな余韻」バジーノイズ 霞さんの映画レビュー(感想・評価)
爽やかな余韻
演奏シーンには何度も涙が出そうになった。
清澄が自室で1人で音楽を奏でるシーン、潮のそばで奏でるシーン、AZURメンバーと奏でるシーン。
素敵な音楽と俳優陣の当て振りなしの自然な演奏にグッときた。特に岬のドラムには惚れた。かっこいい。
直で感じる情熱さとか伝えたい感情ダダ漏れのまっすぐな感じとかそういう音楽じゃなくて、内からふつふつ湧き上がるような熱?爽やかさ?風を感じる的な。まさに「青」。これが心地よかった。いつかAZURのライブに行って心を浄化させたい。
全体的に爽やかでお洒落な雰囲気。絵的にも随所に散りばめられた青色が本当に綺麗だった。そして「バンドで売れようぜ!」みたいながむしゃらに頑張る泥臭さの様なものを感じない。
だが、酒、タバコ、彼女、落書きまみれのライブハウスの楽屋にはリアルを感じた。陸の気怠そうな感じとか、こういうベーシストいそう〜〜って思った。
フィクションとしての綺麗さの中に散りばめられたバンドマンのリアルさみたいなもののバランスが良かった。
清澄は音楽の才能があるけれど、多くを語る性格ではないのになんで皆んなにこんなにも愛されてるんだろうと考えた。
ぶっきらぼうかと思いきや、目の動きとか表情が意外と豊かで、そこにぐっと心を掴まれてしまうのかなと思った(視聴者の私も掴まれた)。
嬉しい時は目をキラキラ輝かせてたし、別のアーティストと共にステージに立つ時は顔が死んでた。滲み出るように苦しい涙を流すシーンにはリアルを感じた。「早く行こ」と言う潮の後ろを歩く姿は守りたくなるような存在にも思えた。
「圧倒的共感」と謳っていた本作。そこまで表に出てないようなバンドが好きな自分にとって、潮の気持ちは共感できる部分があった。
好きなインディーズバンドがメジャーに行ったり、テレビに出たり、TikTokで音源が流行っていい感じの動画に使われるようになったり、路線変更してSNSでバズりそうな恋愛系の曲リリースする様になったり。別に誰も悪いわけじゃないし売れるって言うのはすごいことで嬉しいことだけど、どこか自分だけで楽しんでいた音楽が世に広まることによる「喪失感」みたいなものを感じることがあるし、「本当にそれがやりたい音楽なの?」って思っちゃうこともある。売れる音楽とアーティストがやりたい音楽といちファンが好きな音楽、必ずしも一致するなんてことはないってわかってるけど。ただのファンのエゴだってわかってるけど。
だからその気持ちわかるよ潮〜…なんて思って見てた。
見た後の後味はただだ「爽やかさ」が残った。そして、音楽をやってる人はかっこいいと改めて思った。音楽が好きな自分にとって、こんなにも耳で楽しめる映画に出会えて嬉しかった。続編、あったらいいな。