劇場公開日 2024年5月3日

「音楽に疎くても楽しめる」バジーノイズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0音楽に疎くても楽しめる

2024年5月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

原作未読というか、あることも知らず、さほど興味はなかった本作ですが、何度も流れる予告に惹かれて鑑賞してきました。音楽に造詣の深くない自分でも共感できる部分が多く、なかなか後味のよい作品でした。

ストーリーは、マンションの住み込み管理人をしながら、PCを用いたDTMに一人で没頭する青年・清澄が、彼が毎夜流す音楽を楽しみに聴いていた上階に住む女性・潮と出会い、彼女が撮影して投稿した清澄の演奏動画がネット上で注目されたことをきっかけに、清澄の音楽人生が大きく動き出すというもの。

人との関わりを断ち、音楽の世界に一人で浸ることが好きだった清澄が、もう一度人と関わって変容していく姿が、周囲の人物の心情とともに丁寧に描かれているのがとてもよいです。正直言って音楽に疎くて、流れる楽曲に感動したり、そのよさを理解できたりということはなかったのですが、音楽を通じて人々が結びつき、そのこだわりゆえに袂を分つというのは、とても共感できます。

そういう意味では、音へのこだわり、演奏の楽しさ、音楽性のズレ、バンドの将来、自分の立ち位置、仲間との距離感、ビジネス視点など、異なるさまざまな価値観に基づいて行動する登場人物たちが、それぞれに人間くさくてよかったです。清澄だけでなく、潮も陸も航太郎も、それぞれの心情が伝わるようにきちんと描かれていたと思います。なにげにマザーズのリーダーも、イキってるだけのように見えて、実は心中に大切している思いがあるというのも、なかなか熱くてよかったです。

クライマックスは、序盤で潮が窓ガラスを割るシーンのアンサーとして、清澄から歩み寄る姿が熱く沁みます。この二人の関係が下手に恋愛に発展していかなかったのも好印象です。そういう気持ちももちろんあったと思いますが、そこを直接描かないことで、本作の視点がブレずに済んだように思います。

タイトルの「バジーノイズ」とは、虫の羽音のような雑音の意味らしいですが、音楽用語としては、楽曲に変化を与えたりエッジをきかせたりするノイズという意味もあるようです。独りの音楽世界に浸る清澄にとって、初めは煩わしい雑音だったものの、結果として彼の音楽と人生に大きな影響を与えた、潮や陸や航太郎たちは、まさに「バジーノイズ」です。それはまた、彼らにとっての清澄の存在もそうであったと言えるでしょう。

主演は川西拓実くんで、演技経験の少ないアイドルのようですが、それがかえって清澄のキャラによくハマっています。同じく主演の桜田ひよりさんも、関西弁キャラの潮が意外にハマっていて、一皮むけたような好演です。脇を固めるのは、井之脇海さん、柳俊太郎さん、円井わんさん、奥野瑛太さん、佐津川愛美さんら。

おじゃる
トミーさんのコメント
2024年5月5日

共感&コメントありがとうございます。
同様にCDを手包みする奥さん? あるんだろうなぁと泣けましたね。

トミー
トミーさんのコメント
2024年5月4日

マザーズデイのボーカル、嫌なちゃらんぽらんな奴かと思いきや、清純の才能に敗北感を感じながらもファンの為に続ける男気がありました。自分はここが一番泣けました。

トミー