劇場公開日 2023年10月20日

「ギャレス・エドワーズ感」ザ・クリエイター 創造者 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ギャレス・エドワーズ感

2023年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

SFファンの私としては久々のSF大作だったので、公開して直ぐに見に行きました。観終わっての一口感想で言うと“好き”な作品です。
監督はギャレス・エドワーズということで(もう人の名前が憶えられない歳になり直ぐにネットで検索する癖がついてしまいましたが)この監督作品は「モンスターズ」「ゴジラ」「ローグ・ワン」と殆ど見ていて、どれも好きな作品だったのできっと私との相性は良いのでしょうね。
というか、作品自体がどれも今まで何度も作られてきた既成の題材でありながら評価されているという事自体、非常に優秀な監督であるという事の証しなのでしょう。
本作はオリジナルストーリーですが、大まかなあらすじだけを聞くとありふれた内容で、誰もがこんな作品になるだろうと予想し見る前から興味を失いそうなストーリーラインにも関わらず、見終わって好きと思わせる(しかも私はSF大好き人間である)その手腕は相当のものだと感心しました。
実際にこの作品の物語自体凄くありふれた内容にも関わらず、画面から目が離せなくなりましたから、何か特別な(私を)惹きつける要素があったのでしょうね。その辺りを今回は考えてみたいと思います。

本作も大筋は“人間 対 AI”なので、一般的には人間側を“善”・ AI側を“悪”というパターンで描かれるのがハリウッドフォーマットだと思うのですが、この監督はその一般的パターン(想定)を利用しながらも微妙にずらして見る者を惹きつける特徴があるように感じられました。
本作の場合だと、人間 (善)対 AI(悪)を逆転しているし、人間(アメリカ人) 対AI(アジア人)という構図も重ねたり、人間側の最終兵器もマシンであるという皮肉であったりと、全体的にハリウッド娯楽映画そのものに対しての皮肉を散りばめているのが本作の特徴であって、アメリカ以外の国の人間が見るとかなり納得感の得られる作品になっていました。
更に本作の一番の魅力は映像なのですが、そこには様々なハリウッドSF大作や日本アニメなどのオマージュに溢れていて(特にSFファンには)たまらない作品に仕上がっていました。
SF映画や小説やアニメに毒された人間の思考パターンの裏をかきながらも、しかし人間の普遍性は外さないという特徴の監督だと思いました。そして、国家的イデオロギーに捕らわれず、地球規模の本当の意味でのグローバル感のある作家さんの様な気がします。
そもそも論ですが、人間 対 AIの構図にしたって、人間 (善)対 AI(悪)がある筈もなく、人間自体が善悪両方備えている生き物であり、人間が作る AIに対してその善悪の要素を入れるかどうかは人間の判断次第であるという事になりますからね。そして、SF小説の“ロボット三原則”を基準とするならば、確実にロボット(AI)に対しては(人間の)善の要素のみで作られているので、悪の要素があるのは人間のみという論理が成立します。
しかしながら、今までの古いSF映画・アニメなどは意外とその論理が抜けがちなので(というより無視しているので)、新しい世代の人達がその矛盾を突いた作品作りをしているのが面白いです。

「もうSF映画なんて大量に作られ過ぎているしネタ切れ状態で何を見ても同じだよ」と(SF好きの私でさえ)つい思ってしまう時があるのですが、こういう新しい監督が既存の古いパターンを作り直してくれるので中々止められないのですよね。

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シューテツ