劇場公開日 2023年12月1日

「冒頭の映像が惜しまれる」怪物の木こり おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5冒頭の映像が惜しまれる

2023年12月3日
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鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

グロいのは苦手なのでスルーしようかとも思ったのですが、映画の日で鑑賞料金が安かったので、「青ブタ」「ナポレオン」に続けて鑑賞してきました。それなりにグロシーンはありますが、なかなかおもしろい要素の詰まった作品でした。

ストーリーは、自他ともに認めるサイコパスの弁護士・二宮彰が、ある日、怪物の仮面を被った人物に襲われて大けがを負った同じ頃、被害者の脳を抉り出して持ち去るという猟奇殺人事件が立て続けに発生し、一連の事件は同一犯によるものではないかと思われる中で、二宮の過去に隠された秘密と事件の真相が明らかになっていくというもの。

サイコパスの犯行と思われる猟奇殺人事件でホラー風味を漂わせ、その裏にある意外な動機やそれにまつわる二宮の過去を紐解いていくというミステリー展開が興味をそそります。その一方で、サイコパスと思われた人物の心に変化が起き、葛藤していたという人間ドラマも盛り込み、物語に奥行きを与えようとしているのは好印象です。

しかし、真相が明かされてからのカタルシスが薄いのがとにかく残念です。冒頭の児童大量殺人という胸くそ悪い過去シーンが、つかみとしていいのですが、伏線としてはやりすぎです。以降の事件との関連をいやでも考えてしまいます。しかも、二宮にも本人も知らない脳チップが埋め込まれていることが早々に示され、猟奇殺人の目的が脳チップにあることは明らかです。おまけに、犯人も名前やキャスティングから絞れてしまいます。それなのに、明かされた犯行動機には納得がいかず、むしろなぜそのような思考に至ったのか疑問です。

では、脳チップの破損により、彼らがこれまでの悪行に向き合い、良心の呵責に苦しむ姿が描かれたかというと、こちらは描き足りない印象です。セリフで少々語られますが、映像による説得力が乏しく、人間ドラマとしては薄いものに感じます。そのため、ラストもカタルシスに繋がらないのだと思います。

とはいえ、戸城のプロファイリングから犯人像を的確に絞り込む展開は、なかなかおもしろかったです。そういう意味では、よくわからない絵本のくだりは切り捨て、本物サイコパスの杉谷にもっと暗躍してもらい、戸城視点で物語を進めるサイコスリラーとしてもよかったのではないかと思います。

主演は亀梨和也さんで、サイコパスを好演しています。しかし、それ以上にサイコパスを強烈に感じさせたのは染谷将太さんで、彼が扮する杉谷にはもっと大きな役割が欲しかったです。他に、菜々緒さん、吉岡里帆さん、中村獅童さん、渋川清彦さん、堀部圭亮さんらが脇を固めます。

おじゃる
じきょうさんのコメント
2023年12月5日

カタルシスがなかったですねー。
木こり視点かプロファイラー視点の一人称で「羊たち」のようにやればサスペンスも高まっただろうにとか、素人ながら余計なことを考えちゃいますね。

じきょう