パラダイス 人生の値段のレビュー・感想・評価
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若さを金で買える世界。それは一見、幸せなようで闇が深い。年齢を売買...
後味は悪いけど、案外あるかもしれない近未来が味わえる
臓器売買のように寿命が売り買いできる世界で、金に困った貧乏人が渋々ではあるが、寿命を金持ちに売ってしまう。
もちろん自分の寿命が減ってしまうのは、庶民にとっても最悪の選択なのでなかなか売らないし、お互いが適合しなければ寿命の受け渡しはできない。
主人公夫婦の嫁は家を燃やされて、ローンの担保になっていた38年分の寿命を強制的に没収されてしまう。その結果、老婆になってしまい、お腹の赤ちゃんを流産してしまう。
寿命を取り戻すために夫は、寿命を買って若返った金持ちを誘拐するが、途中で間違えて娘を誘拐したことに気づいて、その後どうする?といった流れ。
興味深かったのは、最初は誘拐された娘に同情的だった嫁が、娘が刃物を向けた瞬間にスイッチが入り、最後は無関係な娘から寿命を奪い取り、若返った後は新しい彼氏を見つけて、子供を宿す。
夫の方は人生をムチャクチャにされた寿命移植を根絶するために、テロリスト組織に入って戦い続ける。
命を繋ぐのが女性で、命を使うのが男性という考え方って日本でもあるような気がして、ドイツとの意外な共通点を感じた。
今の男女平等の価値観とはあってないけどね。表現は自由だよね。
脚本がイマイチ
寿命移植
なかなかエッジの効いたラストで、2時間つき合った甲斐がある。
寿命が移植できる近未来は、残り寿命が通貨として腕に表示される『TIME/タイム』を思い起こさせる。
『パラダイス 人生の値段』では、寿命を売買した結果が、目に見える形で描かれる。ドナーとして若さを提供した側は、提供した年齢分、老化が進む。受け取った側は、時計を巻き戻したように若返る。
この近未来のドイツでは、医療行為としてこの売買が合法化されている。
寿命を売買できるというアイデアは面白く、物語を駆動する力は抜群にある。惜しいのは、このバイオテクノロジーの理論が示されていないこと。
細胞の寿命を司るテロメアの数を契約年数分移動する技術ではないかと想像したが、SFである以上作り込んで欲しかった。
最後まで飽きさせない展開も続くし、富裕層と貧困層の寿命格差が広がりつつある資本主義の歪みを体感できるSFスリラーに仕上がっている。
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