「いろいろあるけど、明るく前向きに生きるのだ」違国日記 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろあるけど、明るく前向きに生きるのだ
朝の目の前で両親が事故死した。母の妹の槙生(まきお)は子供が苦手だが勢いで姪を引き取ると宣言する。2人の手探りの生活が始まった。
娘への愛ゆえに価値観を押し付け気味だった母に対し、自主性を尊重する叔母。高校に進学して人間関係も変わり、朝は戸惑いながらも自分で判断することを学んでいく。槇生は朝との生活の中で、嫌いだった姉の思いの一端に触れ、自分の気持ちを整理していく。
出演者の自然な演技で、観ていてほっとする作品です。新垣結衣さんの落ち着いたトーンの声が、信念をもって生きている女性を体現し、夏帆さんもしなやかに生きる女性を好演していました。
設定が甘いところがありますが、おまけで☆4です。
幾つかの違和感
本作は、周囲の固定観念や偏見に悩みながらも前向きに生きる女性にエールを送っている作品なんだろうと思います。ただ、いろいろ盛り込み過ぎて、違和感が生じてしまいました。
両親が事故死した事を隠すのは不可能だし、中学の担任の対応は適切で、朝が変に気を使われたくなかったとしても、あんなに激高するのはキャラクター的にも変でした(父親の会社が倒産した、とかならわかるけど)
朝の両親は席を入れていませんでしたが、あの母親はきちんと入籍したいと思うタイプでは無いでしょうか。
槙生が姉の言葉にずっと傷ついてきたとしても、十数年全く会わないなんて、恨み過ぎじゃないでしょうか。あるいは、姉妹の母親は何でフォーローしなかったのか。母親が原因を作っているのに。
槙生と奈々が仲良くじゃれ合っている様子を朝が興味深く眺めていると、奈々が、「そっかー、こんなだらしない大人に会ったことが無かったかー」みたいなセリフがありましたが、どこがだらしない?と思いました。槙生は人気作家で片付けが苦手なだけだし、奈々はデキる女、仕事場はキチンと整頓され、料理も上手く、身だしなみにも手を抜かない(足りないのは夫くらい?)
一昔前に、家庭を持って子供がいる女性を勝ち組、独身女性を負け組と線引きするのが流行りましたが、制作者こそがそれを引きずっているんじゃないでしょうか。
登場する女性は高校生も含めて生き生きしていましたが、男性は脇役でした。男性だって色々悩んでると思います。
朝には悲しみの感情が薄いんでしょうか、父親の存在感はゼロでした。