「余白部分がかなり多め」違国日記 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
余白部分がかなり多め
特別新垣結衣推しではないが、近年露出少な目の彼女なので、見逃すまいと観賞。
【物語】
朝(早瀬憩)は中学の卒業式を目前に控えたある日、目の前で起きた交通事故により、両親を突然失う。心の整理もつかない中、ぼうぜんと葬儀の席についている朝の周りでは、独り残された彼女の今後について参列者の無責任な言葉が飛び交っていた。その言葉に嫌気がさした朝の叔母である槙生(新垣結衣)は、思わず朝を引き取ると申し出る。
槙生は姉であり、朝の母親である実里(中村優子)とは姉妹でありながら疎遠で姉が亡くなるまで朝とはほとんど会ったこともなかったので、槙生自身が一番思いもかけない発言だった。小説家の槙生と高校に進学した朝、価値観も生活習慣も違ったが、暮らしていく中で絆を深めていくが、・・・
【感想】
もう少しベタな、分かり易い感動、あるいはほっこりとした気持ちを味わえる作品を想像していた。 が、そうでもなくて、どちらからと言うと、もやッとした気持ちを味わってしまった。
例えば、タイトルの一部にもなっている“日記”。朝の母親が朝に遺した日記が物語のひとつ重要なアイテムとなるのだけれども、前半に示されたその伏線の回収はエンディング間際まで引っ張られる。朝の母親の娘に遺した思いだけでなく、どうやら現在の槙生の価値観に影響している過去のトラウマにも関係しているっぽい。さあ、どんな回収が待っているのかと待ったわけだが、それがイマイチはっきりしない。 解釈が観客に委ねられると云うのがより正しい言い方かも知れないが、俺にはピンと来なかったしので結末が全然スッキリしない。
それが一番象徴的だが、槙生と姉の関係。槙生と親の関係等、ボヤっと示されて、「そこに何を感じ取るかはあなた次第」的な観る人の感性に任される余白部分が多い。そういう感性レベルの高い人や、考察の好きな人には良いかも知れないが、残念ながら俺にはあまり楽しめる作品ではなかった。
脚本的にも両親を失くした直後の朝の様子ももう少し考えても良かったのでは。強がっているというところがあるにせよ、もう少し朝の“寂しさ”が描写された方がよりリアルに感じられて、スンナリ物語に入れたと思う。
それから不満をもう1つ。本作に限らず、近年こういう作風の作品にお決まりのように入るLBGT要素。文部省から必ず入れなさいと指導されているのかと思いたくなるほど。今風社会的価値観を作品に織り込んだと言いたいのかも知れないが、どいつこいつも入れるので、俺的は逆に陳腐。そこに焦点を当てて深堀りするのなら良いが、ただなんとなく入れてみました、というのはやめて欲しい。
一方、良かったところを挙げれば朝役の早瀬憩。さほどキレイではないのだけど、多感な中学から高校一年生の少女をすごく自然で瑞々しく演じていた。何より“普通”感が良かった。
目当ての新垣結衣については、“正欲”に続いて今作も極端に笑顔の少ない役。演技としてはまあまあ悪くは無いのだが、笑顔が無ければ、ガッキーと言えども魅力は半減以下。これなら新垣結衣でなくても、というか数いる地味だけど演技力が高い女優の方が良かったのではないかと正直思う。 アイドル女優からの脱却を図るために意図してこういう作品を選んでいるのだろうと想像できるが、“新垣結衣”の価値はどこにあるかも今一度考えて作品選びをして欲しいと思う。あなたより演技力が勝る女優はいくらでも居るが、あなたより存在自体が光を放てる女優はそう居ないのだから。