「第二次大戦から何年か経ったドイツ、フランクフルト。 そこかしこの建...」天使の影 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
第二次大戦から何年か経ったドイツ、フランクフルト。 そこかしこの建...
第二次大戦から何年か経ったドイツ、フランクフルト。
そこかしこの建物に傷跡が残り、瓦礫もいくらか残っている。
仲間たちと寂れた街角に立つ娼婦リリー(イングリット・カーフェン)。
繊細な性格からか、はたまた病弱さを漂わせる風貌からか、仲間内からも客からも評判が良くない。
今日も今日とて、お茶を引いてしまい、帰宅したところ若いヒモ男(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)から、明日の競馬の資金をせびられる。
仲間から借金をすると言っても聞き入れず、もう一度、客を引いてこいと突っぱねられる。
ふたたび街に立ったリリーは、ひょんなことから裏社会の大物のユダヤ人(クラウス・レーヴィッチェ)に気に入られ、ユダヤ人のパートナー的存在となって位置を上げていくのだが・・・
といった内容。
観る前に、ダニエル・シュミット監督とはあまり相性が良くない(といっても、若い時分に観た限りなのだが)、戯曲の映画化ともあまり相性が良くないので、嫌な予感はしたのですが・・・
巻頭早々から、七面倒くさい台詞ともったいぶった台詞回しで予感は的中。
前半から、少々眠気が・・・
と、なんどか一瞬、記憶がないような。
ダニエル・シュミットの演出も、もったいぶってまだるっこしいのだが、時折、レナート・ベルタの撮影でハッとさせられるところがあります。
ポスターデザインにも使われているシーンのカメラポジションの良さ、床に投げ出されたリリーの俯瞰ショット、フィックス画面から前または後ろへゆっくり動く移動撮影など。
前半はかなり演劇臭が強くて辟易するのですが、後半、黒人女性が歌うショットが挿入されるなどのアクセントが効き、かつ、リリーを中心とした男たちの破滅の様子が描かれるようになって、少し面白くなってきます。
瓦礫とともに残る反ユダヤの残滓、復興の中で飲み込まれていく女と男。
バイタル溢れる「マリア・ブラウン」の裏返しのような物語ととらえることもできます。
最後は、大物ユダヤ人に撃たれてリリーは死に、男も死んでしまいます。
リリーが頽(くずお)れるショット、ふたりの男女の姿は、冒頭近くのリリーとヒモ男の姿と同じ。
衣装が、白から黒へと変わっただけ。
ここの演出は、いいです。
かなり好きかも。
ということで、随所にハッとさせられるシーンはあるのですが、個人的には肌に合わなかった感じです。