「この内容なら、全編字幕なし(特に歌唱シーン)で勝負しても良かったのかも」はじまりの日 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
この内容なら、全編字幕なし(特に歌唱シーン)で勝負しても良かったのかも
2024.10.17 一部字幕 MOVIX京都
2024年の日本映画(107分、G)
落ちぶれたロックシンガーと才能豊かな若者との邂逅を描いた音楽映画
監督&脚本は日比遊一
物語の舞台は、愛知県の名古屋市周辺
薬物使用で表舞台から消えたロックスターの「男(中村耕一)」は、安アパートを借りて、細々と暮らし始めていた
いくつかの面接の後、清掃会社に転がり込んだ「男」は、先輩社員の寺田(山口智充)に気に入られながら、アパートの隣人で同僚の「女(遥海)」のことを気にかけていた
ある日、彼女が歌うのを見た「男」は、何とかして音楽の世界を歩ませたいと考える
そこで、世話になったレコード会社の社長・矢吹(竹中直人)を頼るものの、門前払いを喰らってしまった
「女」は男にだらしない母(高岡早紀)と暮らしていて、「女」の父(尚玄)は妻がおかしくなったことを理由に二人から遠ざかることになった
彼女は歌が好きで、時間があれば広場に行って歌い、常に頭の中は妄想で埋め尽くされていた
一方の「男」は、音楽への未練を抱えながらも、それを許さない業界と戦う気にはなれなかった
だが、寺田の病死によって、ファンとの向かい方を改めて考え直すことになった「男」は、徐々に再起への道を考え始めるのである
映画は、「男と女」によるミュージカル演出があり、レコーディングに入ってからのガチ歌唱のシーンなどは良いと思う
歌唱力に説得力を感じさせるのだが、一番疑問だったのは、「女」が日本語が流暢なのに「歌は英語詞」というところだろうか
彼女自身が語学が堪能で、おそらくハーフ設定のようにも思えるのだが、日本国内で「歌が響く」ということにおいては、日本語詞の方が圧倒的のように思える
ライブ会場に来ているほとんどの人は「歌詞の意味を知らずに陶酔している」という感じになっているので、デビュー前のプロモーションとして成功するかどうかは微妙のように思えた
映画を字幕なしで見ても歌唱力を感じるし、その内容も伝わりそうではあると思うのだが、「言葉の壁を越えて感動できる歌がある」というコンセプトがあるのなら、字幕に関しては全て外した方が良かったのではないだろうか
そして、歌詞の意味を知りたい人向けにパンフレットで日本語訳を載せるというので、その意味は通じるのだと感じた
いずれにせよ、「男」が「女」との出会いによって過去と向き合う物語で、「歌を捨てないこと」が「女」のデビューの条件になっているのは良いと思う
問題は、固有名詞を持たない二人が主人公で、「男」に関しては理解できるのだが、「女」の方は名前があった方が良かったと思う
それは、これから世界に向けて「名前を売っていく存在」であり、その名前から彼女のルーツなり、生き方が見えてくるからである
そう言ったものがなく、普遍的な意味合いの「女」というのを当てはめるには少々背景が特殊すぎるのではないかと感じた