「NTRと性の解放」春画先生 スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
NTRと性の解放
春画の研究家の男やもめの内野聖陽と、春画で色々と目覚めバツイチの北香那の恋愛もの。
春画が題材であるものの、ただ春画を愛でる、という映画ではありません。それが観たければ、今月公開の「春の画」を観れば良いでしょう。本作は、春画を解釈しての作品です。
どう解釈したか、っていうと、春画ってただのエロ本でなく、描かれてる男女(時に男女でないが)に流れる背景の物語を見せるもの。
だから、何がエロに至るorエロを感じるのか?、がこの作品のテーマなんですね。で、それが「NTR(寝取られ)」なんです!
まずは、安達祐実が、春画と双子の妹(安達祐実の二役)に春画先生が寝取られる。北香那を担当編集者に寝取られて興奮する春画先生。最後も双子姉が先生を北香那に寝取らる姿を楽しむ。江戸時代で言えば春画の主要題材である「間男」を現代に当てはめると「NTR」なんです。
もう一つが北香那の性癖の覚醒。短期間で破局した彼女の離婚の原因はおそらく「最初は優しかった」という夫のDVでしょう。弱い女性が春画により性への貪欲さに目覚め、安達祐実により女王様に覚醒する。この成長譚がもう一つのテーマです。
一般的というかキリスト教的というか、貞操や倫理観でみると、ぶっ飛んだ作品でしょうが、春画を真ん中に置くことで、単なるエロや文化作品ではなく、大げさに言えば感性の解放を謳った秀作だと思います。
安達祐実がラスト近くに詠む和泉式部の和歌は、たぶん
「もの思へば沢の蛍もわが身より
あくがれ出づる魂かとぞ見る」
ですね。意訳すれば「愛欲は蛍のように、我が身から出る燃える魂」という感じですかね。なるほど、この作品の締めには相応しい詩です。
ヒロインの北香那は初めて観ましたが、素晴らしいですね。地味なウェイトレスから、怒髪天の般若、妖艶な魔女から、最後は菩薩(と言って支配者ですが、、、)まで、演じきっていますね。この人、とびきりの美人って訳ではないですが、存在感のある方です。
「女優が魅力的に見えれば、その映画は成功」ってポンポさんの言葉通り、この映画は私にとって秀作です。