「確かに上映時間は長いが、それだけ観る甲斐もある一作」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
確かに上映時間は長いが、それだけ観る甲斐もある一作
本作同様、マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロが組んだ『アイリッシュマン』(2019)も、「ドラマシリーズと思えば短いよね…」と思うほどに単体の映画としては長尺(200分超)だったけど、本作もそれに並ぶ上映時間。スコセッシ作品の集大成的な内容である上、周到な構成と隙のない演出により、「体感上映時間は全然短い!」と絶賛が相次いでいますが、これはあくまでスコセッシ作品を摂取する素地のあるファンだからこそ言えること。やはり多くの観客は上映時間なりの長さを実感すると思います。
しかし冗長か、というと全くその反対で、あまりにも重層的な人物描写、焦点となるアメリカ先住民の連続不審死事件の救いようのなさに、むしろよくこの上映時間で描き切ったな、とスコセッシの手腕に感心させられるほどです。
レオナルド・デュカプリオだからこそ画面映えするが、実際のところただのつまらない使いっ走りでしかないアーネストを主人公に据えるという大胆な構成。最初から最後まで全く彼の言動には同意も共感もできないんだけど、それでもこの上映時間を、しかめっ面だけで保ってしまうデュカプリオは見事です。
スコセッシ監督だけに、ドローン撮影も取り入れた映像美、編集術は際立っていて、本作だけでスコセッシ流映像術が一通り学べてしまえるのでは、と思うほどです。さらにロバート・デ・ニーロの、穏やかだけど唖然とさせられる演技など、本作で挙げるべき点は他にも多々あるものの、そこはあえて劇場で確認して欲しいところ。
スコセッシ作品が嫌いでしょうがない、というのならともかく、「観に行きたいけど、上映時間が…」と躊躇している人には、絶対劇場で観た方がいいよ!と強くお勧めしたい一作です。