劇場公開日 2023年10月20日

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「スコセッシのキャリアの集大成的作品」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5スコセッシのキャリアの集大成的作品

2023年10月27日
PCから投稿

沈黙、アイリッシュマンという本人にとっても念願の大作を撮り終えて、肩の荷が降りた後にスコセッシが何を撮るのかなと思っていたが、キラーズオブザフラワームーンは、まさかのその二作に勝るとも劣らないヘビー級の作品で、作品としての完成度の高さに驚かされた。

スコセッシは「カジノ」ぐらいまでで完成した自分のスタイルを一旦封印して,20年ぐらいかけて自分のスタイルを再構築してきたと思うが、今作はその集大成という気がする。テーマ性においても、暴力と信仰というスコセッシのいつもの二つのテーマが「沈黙」よりも巧みに織り込まれて、更に洗練されているように感じた。

内容的には予想される悲劇がただただジワジワと起こっていく、アメリカの暗部を描いた陰惨な内容であるにも関わらず、ノンフィクション小説を読むかのようにのめり込んで3時間半見てしまう。上手く言語化出来ないが、今作を見ている間、物凄く「映画を見ている」という満足感があった。フィルム時代の大作長編映画を見ている時のような満足感と言ったらいいだろうか。撮影、編集、音楽、衣装、セット、役者陣の演技、全てが高いレベルにあるからこそ、このような風格が生まれているのかもしれない。

リリー・グラッドストーンの静かな悲しみと諦めの混じった演技、ディカプリオの、力ある物に屈して、飲み込まれていってしまう男の演技も素晴らしかったし、かつてのあの「怖いデニーロ」を久しぶりに見れたのもうれしかった。デパルマのアンタッチャブルを思い出させる剃刀シーンや、グッドフェローズと同じように法廷で指を指されてデニーロが睨み返す場面等、ニヤニヤして見てしまった。

その他にも法廷場面の意外な配役に、エピローグのラジオ番組、そしてまさかの本人登場という意外なメタ演出。オーセージ族の宗教観を表す様々な象徴的イメージや音の効果も素晴らしい。ボリューム満点で、いくつものレイヤーがある本作は集大成と言うにふさわしい大作だと思う。

moviebuff