「タイトルなし(ネタバレ)」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
20世紀初頭の米国オクラホマ州。
19世紀末に先住民族オセージ族の居留地内で石油が発見され、彼らは一躍、世界屈指の富裕層となった。
石油利権に白人たちは群がり、オセージ族の民には白人の後見人が必要な制度が作られた。
第一次大戦から帰還したアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、オセージ族の後見人で町の有力者である伯父ビル・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼って彼の地にやってきた。
ヘイルはアーネストに自動車運転手の職を世話し、アーネストは富裕オセージ族一家の娘モリー(リリー・グラッドストーン)と知り合う。
アーネストはモリーに恋心を抱くが、ヘイルはそれを利用してモリーの一族が有する財産・石油利権を奪おうと計画、アーネストもその計画に乗せられてしまう・・・
といったところからはじまる物語で、巻頭、オセージ族が石油を発見し、裕福な暮らしを手に入れたことが、短いショットの積み重ねで紹介されます。
この冒頭部分、食い詰めた白人たちが蒸気機関車で多数乗り付けてくるシーンなど、風俗描写も堂々としていて、大作映画感があり、「もしかして『天国の門』的な、米国暗部を堂々とした風格で描く映画かしらん」と期待が持てました。
が、ロバート・デ・ニーロ演じるヘイルが登場してからは、悪い奴らが自己の利益のために暗殺・謀殺を繰り返す、いつものマーティン・スコセッシ監督映画。
殺人も非情なタッチで描かれ、オセージ族側の描写も少ない。
ロビー・ロバートソンの、低く唸るような音楽が常に流れ、陰鬱な気分になってきます。
また、主人公のアーネストも、伯父ヘイルに言われるままに、自らの手で謀殺したり、暗殺者を手配したり、その上、ヘマをしたりと、あまりにも「出来ない男」。
モリーと子どもたちを愛しているのだけれども、ヘイルに逆らう気概もない。
まぁ言うなれば「ヘタレ」。
終盤30分ほどになって、ようやくヘイルに反旗を翻す気概を見せるのだが・・・
先住民vs.悪徳白人、アーネストvs.ヘイルといったわかりやすい対立軸がないので、ドラマとしては観ていてあまり面白い類ではない。
映画最終盤は、公開ラジオショウをかたどったエピローグで、スコセッシ監督本人が暗殺・謀殺されたオセージ族を含む先住民族へのレクイエムを述べるあたりは興味深いが、公開ラジオショウのことがわからないと何のイベントなのかしらんと疑問に思うかもしれません。
映画のタッチとしては『グッド・フェローズ』(鑑賞済み)に近いかなぁ。
異文化を扱った映画としては、『クンドゥン』(未鑑賞)と見比べてみたいな。