劇場公開日 2023年10月20日

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「スコセッシ円熟の作劇」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0スコセッシ円熟の作劇

2023年10月25日
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鑑賞方法:映画館

先住民ルーツのカナダのデヴァリー・ジェイコブスという方がこの映画を批判している。この人は私は知らないが作家で俳優でありカナダではそれなりに重鎮らしい。いわく「悲痛、過酷、容赦がなく不必要に生々しい」「白人の男性キャラクターが深く造形されている一方でオセージ族のキャラクターは浅く類型的」
祖先の虐殺がテーマであり前者の感想は納得出来るが後者の感想はややスコセッシ監督初め制作、出演者には気の毒な感じがする。
一般に善良、無作為な被害者たちに比べれば、冷酷非情で計画的な殺人者たちのほうがキャラクターが濃くなるのは当然。この映画でもキングやアーネストは実際の殺人には手を染めず実行犯となるプアホワイトの連中のキャラクターの立ち方は凄い。特にアナを殺したケネス(だったけ?)の気持ち悪さはハンパない。
そしても一つ。オセージ族は元々はミシシッピ川沿いのオハイオ辺りに住んでいた種族で、合衆国政府に追われ居留地を転々として映画の舞台となるオクラホマ州グレーホースにやってきた経緯があるのです。つまり住んでいるところは祖先の地ではなく土地との精神的結びつきが弱い。急速な生活の白人化によって身体的に脆弱化もしており全般にエネルギーが減ってしまった状態にある。映画の中でも虐げられる一方の人々として弱々しく描かれるのは史実として間違いはないのです。だからこそリリー・グラッドストーン演ずるモリーの神々しいほどの美しさ、病気になるまでの逞しさが引き立つのですが。
そうそう、映画冒頭のオセージ族の人々がパイプを埋めるところ、意味がお分かりの方ご教示下さい。
マーティン・スコセッシという人は移民であるとか「そこに仮に住んでいる、ルーツは別だが帰る術を持たない」人々を描かせたら本当にうまいですね。それにしても80歳になっても題材を見つけてきて脚本を書きこれだけの大長編を制作してしまうパワーは凄いです。
流石に「ウルフ・オブ・ウォールストリート」なんかと比べたらケレン味は少し減ったけど元々、スコセッシの持ち味は軽みにあると思っているので十分満足しました。

あんちゃん
iwaozさんのコメント
2023年12月17日

様々な視点があるとの貴重な情報、ありがたいです。レビューも非常に納得です。デニーロもディカプリオも生き生き?してましたよね。^ ^
人間の愚かさが生々しくて圧倒されました。しかし、これこそ人間の本来の性分の一つなので、
繰り返す事のないよう、こういう作品こそ残していかなければいけない気がしました。
f^_^;

iwaoz
あんちゃんさんのコメント
2023年10月26日

差別し迫害する人は「無知な人」「差別意識から抜けられない不幸な人」として捉えられることが多かったのではないかと思います。この映画では悪意と詐略でもってマイノリティーを迫害する人間の姿がリアルに描かれていてショックでした。

あんちゃん
トミーさんのコメント
2023年10月26日

賛否が出る作品、観客にショックを与える作品として評価出来ます。

トミー