「悲しい」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン 底冷え冬太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
悲しい
クリックして本文を読む
ただただ欲望にまみれた人間の悲しい部分を見せつけられる。
すぐカッとなってムキになって、小心者で、思い込みが激しくて、自分一人じゃ何もできなくて。
……という主人公のアーネストはいわゆる見事なまでに「ダメ男」なわけだが、どうにもこうにも軽蔑できない。
何だか自分の隠していたひとつの側面を暴かれているようで、とても嫌いになれず、それがまた無性に悲しくさせられるのだ。
金にだらしなく、自堕落で、それでも家族を愛していたことは本当で。
最後のウソは果たしてウソであったのか、あるいは本当に知らなかったのか。
モリーにどう答えれば、別れの結末を回避できたのか。
答えはない。
きっと、考えても答えが出る類の問いではない。
それでも、問いかけられた観客はきっと考えてしまうのだ。
自分なら、どう答えたろうか、と。
権力者は最後まで権力者であったことも無力感に支配される要因になる。
強者に喰われる側であったアーネストはどのような余生を送ったのか興味は尽きない。
206分の長時間だが、最後まで気が抜けることなく観終わった。
アーネスト役のディカプリオの、流されるまま流された先に何も残らないことに気づく(しかし気づいた時には既に遅い)優柔不断さを極めた葛藤の演技はあまりにも圧巻。
紛いもない傑作。
コメントする