「無邪気で邪悪な加害物語 ディカプリオの演技は歯痒くて凄い」キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン お尻帝国の逆襲さんの映画レビュー(感想・評価)
無邪気で邪悪な加害物語 ディカプリオの演技は歯痒くて凄い
ディカプリオ演じるダメ男が本当にダメな奴の顔つきをしていて、ディカプリオすげー!と思った。
あんなにカッコイイ顔立ちで、あんなに精神的に未熟な愚か者を表現できることに感動。
とにかく最初から最後まで、白人の「白人以外は人にあらず」精神を見せつけられた。
金のことばかり狡猾に考える強欲さ、白人がインディアンと対等やそれ以下の地位にあるのは許せない傲慢さ、自分の欲や保身のために人を殺すことも厭わない醜悪。
すごく上手く描けてる映画だと思った。
ディカプリオ演じるアーネストがとにかくアホで愚か。
キングおじさんに言われるがまま、自分の頭で考えて判断する素養もなく、でも自分は優れてると思い込みたい、そんな愚かな男の演技が上手すぎる。
アーネストは奥さんのモーリーのことや、自分の子どものことは愛してると言うけど、
モーリーの姉妹を間接的に殺すことや、モーリーの薬に毒を混ぜることに対して、全く加害者としての自覚がないところが頭悪くて怖い。
自分が間違えてると自覚しかけるタイミングは度々あったが、その度に自分に都合の良い言葉で、自分を正当化し続けているように見えた。
自分の子どもが死んではじめて、当事者意識が芽生えたようにも見えたが、
最後まで奥さんに面と向かって「注射に何を混ぜたか」を答えられない臆病者であった。
(頭が悪いから実際何を混ぜたか、自分も酒に混ぜて飲んでても知らないのかもしれない
(知らないなら知らないで、知らないと言えないところがまた臆病))
最後の終わり方はまるで刺さらなかったが、
「こんな凄惨な事件をコミカル調の語りで、娯楽として消費してる白人のグロテクスさ・加害者意識のなさ」を
「実際に映画館で娯楽として消費している白人」に重ねてるのだろう。
3時間におよぶ、白人の無邪気で邪悪な加害物語であった。
色々と考えさせられる映画ではあったが、人に薦めるかと言われたら、薦めないかな。