劇場公開日 2023年8月19日

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「マリ〜ア〜〜 マリ〜〜〜ア〜〜〜」オオカミの家 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マリ〜ア〜〜 マリ〜〜〜ア〜〜〜

2023年11月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

寝られる

チリ南部のドイツ人が作ったコロニーに暮らす美しい娘マリア。
彼女は大切にしていた豚を逃してしまい、厳しい罰を受ける。
耐えきれなくなった彼女はコロニーを抜け出し、森の中の廃墟に迷い込む。
するとそこには2匹の豚がいて、マリアは「アナ」と「ペドロ」と名前をつけ自分の子供のように可愛がるのだが……

ナチスの残党がチリに作ったコロニア・ディグニダをモデルに描いたストップモーションアニメ。
コロニア・ディグニダについては『コロニアの子供たち』とWikiで簡単に予習済み。
『コロニアの子どもたち』ではコロニアの内情や実態を客観的に取り上げていたのに対し、本作ではコロニアに収容されていた人たちの精神的な悪夢を主観的に描いている。
マリアが逃げ込んだ廃墟での生活はほとんどがマリアの精神世界。
「眠るのは嫌い 夢を見るから」というフレーズがシニカルに効いている。
直接的な描写はないのだが、独特のグロを感じる。
『骨』同様裏に隠されたとてつもない恐怖をふんわりと感じる居心地の悪い恐怖だった。

恐怖度に関しては予習しない方が良かったのかもしれない。
「よく分かんないけどなんかヤバくない?」
これがこの監督コンビの味なのだと。
コロニアを知った上で不穏て平穏なこの意味不明な世界観を観せ続けられると、正直少し退屈にも感じた。
さらに子守唄で睡眠誘導してくるので、夢と現実の間を漂うことに。
「眠るのは嫌い 夢を見るから」の言葉の如く、鑑賞後に友達との予定をすっぽかすという悪夢を観たのはまた別の話。
ともかく、不穏な空気は味わえるが個人的には変に期待し過ぎてしまったという印象。
ただ、次々と姿を変えるアニメーション技術は唯一無二で素晴らしく、アニメーション作品としては絶対に観ておく価値のあるものであった。

唐揚げ