哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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技術の集積
さて、仕事が忙しく正月休み以来、私にとっては久しぶり(3週間ぶり)となる劇場鑑賞は『哀れなるものたち』です。先日発表された第96回アカデミー賞ノミネーションにおいて、実に11部門における選出となりました。そして鑑賞してみればなるほど納得の作品です。とは言え、いきなり「作品賞」「監督賞」という印象よりかは、むしろ斬新ながら間違いないと感じることが出来る「技術の集積」による出来と評価だと、頷くことが出来る間違いなさを感じます。
まず「脚色」です(とは言え、私は原作未読です)。ベラ(エマ・ストーン)という「奇妙でありつつ、目を離せない魅力」の女性には隠された過去があり、また独特な世界観が生む特異な人物です。近寄る男性たちは「器量がよく、そして無知」なベラをコントロールしようとしますが、彼女は人形ではありません。彼女を通して見えるもの、経験すること、出会う者たちと行き着く先は波乱万丈ながら、根本的にはとてもシンプルな話にまとまっています。そして、男たちの「男性性」丸だしな言動、また彼らが信じる常識、倫理から宗教に至るまで「男たちの都合や事情で作られたもの」であることなど思い知らされる内容で「50代男性」の私は身もだえつつも感嘆せざるを得ません。
そして、この独特な世界観を作り出す美術や衣装、メイクアップ・ヘアメイクがとても独創的であり、それを際立てる撮影・編集ですね。敢えて視野を狭めたり、魚眼レンズを使ったりと視点によって「どう見えるのか」を鑑賞者に意識させつつ、違和感を不快感にしない切り替えなどは編集の妙かと思います。
主要賞の方は強いライバルがあることもあり、出来るだけ多くの「技術賞」を獲得してもらいたいというのもありますが、結局のところ流石のヨルゴス作品は手練れな一作に仕上がっています。独特な印象に左右されることなく、まさに現代的な作品として一見の価値ありだと思います。
奇を狙いすぎた演出。私には疑問。
監督が自分の才能を開けらかそうとしているのか、奇を狙った演出に戸惑う。白黒、カラー、魚眼レンズ等、音楽も現代音楽かと思わせるものがあった。己の才能を自己誇示しているようで、私は馴染めない。私が好きなテリー・ギリアム監督もそんなところがあるけれど、遊びごころがあって楽しめる。
この監督さん、やり過ぎだよ。セックス場面やグロテスクな映像が過剰で辟易する。そんなに必要だろうか。
男の軛(くびき)から開放され、女性が自由と愛を獲得する魂の成長物語だと、一言で言えばこうなるだろう。一番成長できたのが、娼婦舘だったなんて笑わせる。
主演のエマ・ストーンの熱演は認めるが、それ以外に印象に残るものが余りない。私が気に留めているマーガレット・クアリーが出演していたのが嬉しかった。でも、可哀想な役でした。エマ・ストーンの演技に0.5加点です。
悪くないしジャンルとしては好きなんだが。
まず、オープニングのベラ(厳密には違う)のバックショットから妙に引き込まれる力がありました。こだわりを感じる画でした。それと、寝不足で行くと劇中の穏やかな展開をする時間帯で値落ちする可能性があるので、体調を整えていくことをおすすめします。
当然年齢制限から誰にでも勧められるものじゃないし、地球上の話なのにビジュアルデザインが、どこか異世界や夢の中の話のような雰囲気だし、不安感を煽る独特の音楽が至るところに流れているので、こと日本において興行収入的な意味では成功しないのは間違いない。なので★は4止まりにしました。
ただ、実際にそんな事が出来るか起こるか(出来ないし起こらないな…)というのは別にして、ベラが刻一刻と成長していく様は目を見張る。とにかく体張りまくりだったエマ・ストーンと、パリパートでの俳優陣には惜しみない拍手を送りたい。
ウィレム・デフォーの嗄れ声好きだなぁ。『ナイトメア・アリー』の予告で流れてた呼び込み口上あたりから特にそう感じるようになった。
さて、アカデミー賞での成績はどうなるものか。
R18 はオッサンでも刺激的!
過剰…
大人女性の最高のファンタジー
女性の性をこれほど丹念に描いた映画はないと思う。
性の目覚めに「幸せなことを見つけた」というベラ、メッセージはこれに尽きるだろう。そして彼女がやがて知る男性のもたらす歓び、恐れ、惨めさ、哀れさ…性の持つ暗い側面すら工夫で乗り越えることも出来るし、男性なくとも楽しめることも知る。そんな彼女の成長を目の当たりにする時、自分を含め女性にとっての結婚生活にも通じるものがあると思った。
最後の脳の入れ替えは医師かと思いきや(亡くなったのだから無理か)アレこうくる?と思ったけど、女性の性を奪いコントロール出来ると思い込んでいる男の愚かさ具合を表しているとの私なりの解釈で納得。死にたくなるほど最悪な元夫から、医師の愛と究極の理想的な男性マックスに出会うことができ、自分自身のための性のある人生を手に入れることができた幸せ。
これまで観たエマ・ストーンの演技の中で最高に好き。全ての衣装が超可愛くて、空の色も気持ちを表す景色や建物の色もファンタジー。そう女性の人生はファンタジーなのだ。
アルジャーノン+ムカデ+千と千尋
本当は浜辺美波観たさにサイレントラブを鑑賞するつもりでしたが、上映時間の微妙な不都合から急遽、こちらの作品に切り替えて鑑賞しました。隣の妻は映画が始まってもなお、あれ?浜辺美波は?と言ってたので、タイトル変えたことに気づかなかったみたい。
さて、いきなり予備知識もなく鑑賞し始めましたが、作品紹介欄には「赤ちゃんの脳みそを」と書かれていたんですね。これ読まずに映画観てたんで、途中びっくりしました。映画の世界観がぶっ飛んでます。
私のタイトル読んで、共感される方もいるかもしれませんが、原作を良くぞここまで映画にしたな、と思わせるスケール感でした。何を主張したいのかは、君たちはどう生きるバリによく分かりませんでしたが、ストーリーそのものは分かりやすいので独特の世界観を浸れると思います。
女優さんはアカデミー賞を取ったとか。それは確かに納得です。
さて今度こそは、浜辺美波を観ようっと!
魂の所在からその先へ
個人評価:4.0
原作、脚本がヨルゴス・ランティモスではないので、どこまでが監督独自のテーマか分からないが、自身が脚本も手掛けた「ロブスター」などの過去作同様に、一貫して通づるテーマがあり、サディスティックな演出など、ヨルゴス節満載の作品であった。
過去作では肉体は魂の入れ物にすぎない事を描き、本作では、さらにその先の魂の在り方を語っていると感じる。
魂の上昇には学びが最も重要だと。
無垢なエマストーンの闊歩の様が、冒険によって得られた教養で、歩き方・口調まで上昇している対比は、見る側にそれを物語っていると感じる。
この世は醜く悲惨な世界。生を受けた者は皆哀れである。そこから身を護るのは学ぶ事だけ。
フランケンシュタインのお話を骨組みに使い、生の在り方と、自分という人格の所在は、肉体や脳に宿るものではなく、後天的に得られた知と経験によって確立する事を実証したかの様な映画だ。
まさに寓話的で、見る側に色んな解釈と教訓を教えてくれる。
それにしても全カットがまるで絵画の一枚絵の様に美しく、リッチな作品を観た充実感があった。
上下について
モノクロからカラーへ
高尚、芸術的
宗教的なことや死生観などをテーマにした作品なのかもしれないが、難しかった。
主人公のベラは幼児の脳を持ち、本能のままに生きる。
やがて成長とともに独自の思想を確立してゆく。
あまりにも奇想天外な展開で誰にも感情移入が出来ずに物語が進む。共感できるのは、ベラを連れ去った男が何もかもを失った時の喪失感だけ。
画面はムンク、ダリ、モネ...
そんな絵画を思い起こさせる映像美。
ベラの衣装デザインが凝っていて、とても美しい。
残酷な場面も多くかなりの制作費がかかっているだろうと思った。
見終わったあとは虚脱感。
楳図かずお作品の「洗礼」を思い出さずにいられなかった。
追記
万が一、熱演のエマ・ストーンがオスカーを取ったとしても正直複雑...
ここまでしないと女優は評価されないのか?と思う
【哀れになる映画】
大人の体で新生児の脳を持つ突拍子もない設定を、痛烈な社会風刺に転じつつ、家族愛に帰着させてしまう濃厚な一本。エマ・ストーンの体当たり本気度MAXな演技は、見逃すと本当に哀れ。
◆概要
【原作】
アラスター・グレイによる同名ゴシック小説
【脚本】
「女王陛下のお気に入り」トニー・マクナマラ
【監督】
「女王陛下のお気に入り」ヨルゴス・ランティモス
【出演】
「ラ・ラ・ランド」エマ・ストーン(プロデューサーも兼任)
「スパイダーマン」ウィレム・デフォー
「はじまりのうた」マーク・ラファロ
【原題】
「Poor Things」
【公開】2024年1月26日
【上映時間】142分
◆ストーリー
不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく。
◆
◆以下ネタバレ
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◆エマ・ストーン
本作は何よりも彼女の演技が魅力。大人の体に子供の脳が移植された時、どんなことを考え、どんな言葉を発し、どんな動き方をするのか。皿を割りながらゴッドの帰宅に飛びついて喜ぶ姿は赤子そのもの。リスボンで楽器と歌声に本能での悦を見せるあの表情がたまらない。ダンカンが半ば強制的にフォローに入ったあのダンスシーン(ヨルゴス監督作にはお決まり)も、少しいびつな音楽とステップとともに、ベラが音を楽しむ本能的な姿が見事(ベラに好色を示す者たちに見境なく飛びかかるマーク・ラファロもよかった笑)。そして何より、体を張った演技。“幸せな発見をした”と、初めての性に目覚めたあの表情も良かったし、モノクロからカラーに変わる、ベラの自由が始まったことが視覚的にも表現された“熱烈ジャンプ”(Furious jumpingと言ってた)から、その後の脱ぎっぷりに圧倒される。「女王陛下のお気に入り」撮影中に、ヨルゴス監督からこの企画を持ちかけられていたというエマ。信頼するチームと、ただの娼婦ではなく、赤子の脳で世界に飛び出したベラがたどる必然の世界観を表現する上で、彼女が望んで選んだ選択肢だったかも知れない。いずれにしても、その本気度がスクリーンからこれでもかと伝わってきた。
◆哀れなるものたち
屈託のない視点で世界を見ながら、時には喜びを、時には負の感情を受け取っていくベラ。リスボンでは道端での口論、アレクサンドリアではまさに哀れなまでの貧困に接し、嫉妬に震えるダンカンにはパリでついに愛想を尽かす。性交に悦を感じ、それを生業とする事は彼女にとって自然な事であり、それに激怒するダンカンは、一見当然な男の感情とおぼしくも、恐ろしくちっぽけに見えてくるのが本作ならでは。娼館で彼女が言った“女性から選ぶ事はできないの?”は特に、昔はおろか現代でもブッ刺さる、男女平等の理念を訴えるキラーワードでもありハッとさせられた。世界を知ったその先に彼女が向かった自らの出自には、ベラを“領土”と呼び、従者を冷遇する男の姿。世界の貧困や家父長制、男がいかに哀れな生き物か…ベラの視点を通して炙り出されていく“哀れなるものたち”が、そのまま本作が発する痛烈な社会風刺にもなっていた。
◆家族愛
世界を見たいというベラに、そっとお金を渡し送り出すゴッド。“情が移った”“科学者として失格だ”のセリフには、ゴッドがベラを娘のように思う表現が見え隠れ。ベラはベラで、いつもハガキをよこしながら、ゴッドの窮地には飛んで駆けつける。常にベラの身を案じていたマックスは娼婦となった彼女も受け入れる。死へと向かうゴッドに寄り添うベラとマックス、そんな3人の姿はもはや家族そのものだった。突拍子もない設定や、内包する社会風刺もさることながら、いびつながらもそんな家族愛に帰着させている事が本作のミソ。解剖動物や解剖人間に囲まれた、それだけを見ると“哀れなるものたち”でしかないラストは、本編を通してみると夫もパートナーもいるベラが、“本を読む”自由も勝ち取った、幸せの光景になるのがまた本作ならでは。独特の色彩、映像表現もありつつ、鑑賞後の余韻が延々と続く、なんとも見応えのある作品でした。
◆関連作品
○「女王陛下のお気に入り」('18)
本作と同じ監督、脚本家で製作され、エマ・ストーンも出演した作品。主演のオリビア・コールマンがアカデミー主演女優賞を受賞している。ディズニープラス配信中。
○「クルエラ」('21)
ディズニーキャラクターの実写化。第94回アカデミー衣装デザイン賞受賞作品。エマ・ストーン主演、本作と同じ脚本家、同じエマのメイク担当。ディズニープラス配信中。
◆評価(2024年1月26日時点)
Filmarks:★×4.2
Yahoo!検索:★×3.1
映画.com:★×4.1
純粋培養された知性、狂気、エロスが織りなす傑作!
原作は存じ上げないですが、4:3の映像アスペクト比も含めてレトロな美術設定、殊更蒸気機関がフィーチャーされてるあたり、スチームパンクの異世界物といっても過言はないと思います。
公式の事前情報からしてネタバレ全開で、彼女(ベラ)が自ら命を断ち、妊婦であった頃の自らの胎児の脳をある天才外科医により生体移植されて蘇生した・・・という端からぶっ飛んだ設定です。
マッドサイエンティストの外科医は、研究室兼自宅の豪邸に彼女を閉じ込め、外界の刺激から隔離しその精神的成長や成人済みの肉体とアダプトしていく様を科学者の視点で経過観察します。
しかし、精神と肉体の過度なアンバランス、そして彼女自体の知的好奇心や行動力、学習能力の優秀さからそれはほどなくして親代わりである外科医の制御出来る範囲を超えます。で、いろいろあって悪い女たらしの法律家の手引きもあって彼との冒険の旅に出るという物語。
まず、画面に釘付けになったのはベラの精神と肉体のアンバランスさの上に奇跡的に成立してしまった強烈なエロティシズムです。いや、これは見方によっては変態的であるが致し方ない(笑)。
彼女の快楽嗜好が幼児特有の根源的な食欲、睡眠欲から→性的快楽の追求に短期間に急峻な移行をします。しかし説得力のある背景、設定からかそこまで奇異な印象は受けませんでした。
何よりベラ演じるエマ・ストーンさんの女優生命を投げ捨てているんじゃないかというくらい出し惜しみしない(?)熱演、まさしく怪演がフィクション世界におけるベラの実在を不動のものとしていましたね。
冒険の旅においてベラの留まることを知らない知的好奇心は、性的倫理観、そして一般常識やそれに基づく共感性が欠如した奇行となって現れます。
その一連の彼女の行動は詳細を語れないくらいインパクト十分(笑)ですが、そんな中にあって流されることなく欺瞞にも染まらず、常に世界の観察を怠らず正しい科学者の視点、好奇心でやるべきことを実行する様は大変、愉快爽快でした。
18禁ですし、エログロ狂気満載で倫理的にはボーダー振り切れてます。が、映像は本当に雰囲気でていて美麗、かつ物語は破綻なくすすみ結末も納得??なので、ぜひ試しにご鑑賞ください。
傑作です。
エマ・ストーンよく出たな!!!
絶対ひとりで観て!
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