「「曇りなき眼」で世界を見つめよ」哀れなるものたち なにわさんの映画レビュー(感想・評価)
「曇りなき眼」で世界を見つめよ
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自分自身の眼で世の中を見ろ、と言われた気分。それは、ただ単に公平な視点で物事を見るということだけではなく、常に自分の目で見て疑問を持ち考えよ、ということ。
一人の女性が自立するまでの過程も描いている。ベラの内面の成長と、危なげな歩き方が、段々と地を踏み締める歩き方に変わっていく様子がリンクする。子ども→大人への人間としての成長と、内(家)→外(世界)への女性としての自立だ。実験のための、ものとして扱われていたベラが、一人の女性になっていく様は、女性に対する所有欲へのアンチテーゼだ。
好きな相手が他人と性行為をしたら嫌なのは当たり前だ。だが、行為者が男性である場合より、女性である場合の方が世の中の目線は辛く鋭い。娼婦が卑しいという考えも、女性に対して清廉さを過剰に求める意識の表れだ。また、女性の体が、男性の「もの」であるという歪んだ前提も、ベラの奔放さによって逆説的に垣間見える。自分の体は誰のものでもなく、自分のものだ。
ベラが性欲だけでなく、知的欲求を満たすことにも快感を覚えてるのが良かった。知的な人やものに触れることは、自分の内面を成長させ、言葉遣い、考えを形成させる。人間的成長に不可欠だ。
どこかファンタジー味のある街並みやセットが、ベラの経験する冒険らしさを強調していて面白かった。画としてもユニーク。
突然現れた生前の夫について行っちゃう展開はちょっとびっくりしたけど、好奇心旺盛なベラなら、まあ有り得るのかな。彼女がなぜ自殺したかが分かったのも良かった。でもやっぱり、自殺の理由はほんのり匂わせるぐらいで丁度良かったのでは、と思ってしまう。
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